はじめに
ここでは痛くない注射ができることがホームドクターにおいて最高に重要であり、痛くない注射ができるようになると教科書的には治せないとされる種々の疾患を治せる稀少で特別な名医になれることを解説していこうと思います。注射を痛くなくできる腕は想像以上に役に立ちます。外科のどんな名医も、学長になった教授も、開業すればホームドクターです。長い長いホームドクターの期間を有意義に生きるために、痛くない注射技術を身に着けてほしいと思います。医者の一生
医者の世界では大学の教授になることが最高の成功とされます。教授になるためには東京大学医学部を卒業することが最短距離であり、そういう意味では医者として成功するかしないかはある程度学生時代に決まっているとも言えます。そして学会の理事長になることはさらにトップの証。しかし、そうした彼らも教授を退官してからはただの人となります。今までちやほやしていた医局員も一斉に背を向け始めます。世界から注目を浴びた難病のスペシャリストも、右に出る人がいないほどの手術の腕前も、大きな病院を離れると一人の単なる医者になりさがります。それは教授に限りません。チーム医療で第一線で活躍した輝かしい外科手術の功績も、チームを外れると自分一人では以前のように腕をふるえません。たとえチームを自ら作っても、自分の高齢化には打つ手がないものです。皮肉なことに、チームでは大成しなかった三流の医者も開業してホームドクターとなってから、地域で多大な貢献をし、幸福感に満ちながら医者を続ける者もいます。 すべては60歳から始まります。それは医者も高齢化するのだから理解できるでしょう。高齢となり、第一線で手術ができない肉体。大学を退官した身。そこからどのように全力を尽くして生きられるか?考えたことがありますか?
高齢化社会を救えるのはホームドクター
大学病院の高額医療や最先端医療技術は高齢には無力です。しかし、日本は超高齢化社会に突入しました。つまり最先端の医療が無力化される患者の割合が莫大となっていることを意味します。彼らを救えるのはホームドクターだけといえるでしょう。つまり無情で残酷な高齢という絶望と日々戦うホームドクターのみが国を救える存在となる時代です。それは極めて皮肉な時代です。高齢と戦う方法は教科書には載っていません。前人未到の難題です。教授の知識も専門家の腕も全く無力な混沌とした領域です。そこに踏み込めるのは彼らを本気で治療しようと必死にいろんな小技をあみだしたホームドクターのみなのです。本当に皮肉です。教授をはじめ専門家となった医者はホームドクターを蔑視する傾向がありますが、実際のところ高齢者を治療する腕はホームドクターの方が高いでしょう。そして彼らは教科書にも載っていないような治療を試し、小技を重ねて高齢者の治療をそれなりに成功させています。その道のプロと言われる教授たちが見捨てた高齢患者を彼らは熱心に治療し、それなりに成果を出します。それらは形容しがたい充実感と満足感です。一流の外科医も、難病奇病のスペシャリストも、名だたる教授も、最後にはホームドクターとなるものです。ならば若いころからホームドクターのトップを目指せば、人生が終わる最後の日まで全力を尽くせる医者でいられるでしょう。チーム医療に酔いしれた医者たちは、60歳を過ぎてからは蝉の抜け殻になってしまうでしょう。
自分一人でもできる医療を磨いた者は大道芸人の芸のように、修行を積めば積むほどその技に切れが出てきて、歳を重ねるほど深みがまします。そういう医療ができるのはホームドクターでしかありません。ホームドクターをあざけ笑った医者たちは、その医療技術が彼らの足元にも及ばなくなるでしょう。私がそれを証明押しています。私の医療技術はすでに権威者たちの医療をはるかに越え、数十年以上先を走っています。今の医学では治せないとされている疾患を様々な工夫をこらして治せる医者は全国各地にぱらぱらと存在します。彼らの治療技術は毎日の積み重ねから生まれたものなので明文化されていなくても実績は劣りません。ただし直感がなせる治療なので論文にもまとめられないのが難点です。
ですが、治せる腕があることだけで彼らは大いなる充実感を得ています。ただただ目の前の困っている患者を自分の特殊能力で助ける。自分しかできない自分のオリジナルの治療法で他の医者がさじを投げた患者を救う。そうした保険医の枠を超えた治療ができる医師が全国には存在するのです。いずれは誰もがホームドクターになります。その時に過去の地位や名誉だけをひけらかすつまらない医者になるか? 修行を積んで高齢にまつわる様々な病気を的確に治療できるスーパーな医者になるか? 前者には未来が暗いですが後者には死ぬ直前まで光が差しているでしょう。
高齢という他の医者がさじを投げる自然現象。それに立ち向かうホームドクターが今最も必要とされている医者です。ホームドクターを医者の墓場だと考える余地などありません。そして痛くない注射ができるようになると間違いなくスーパーホームドクターの道が拓けます。
治療技術が向上すると患者側に壁があることを知る
私はこれまで「他の医者が治療をあきらめた患者」ばかりを専門に治療してきました。もちろん疾患は整形外科領域であすが、皮膚科・婦人科・泌尿器科・耳鼻科・精神科・脳神経科などに範囲が及ぶこともあります。とにかく教科書的には打つ手なしと言われるものをどう治療するかに真剣に取り組んできました。そして日常にある数々の難病を治療できるようになりました。私の言う日常の難病とは命を落とすような病気ではありません。例えば「手足のしびれ」「長年続く頭痛や肩こり」です。これらを本当に治せる医者は世界を探しても多くはいません。私は様々な「生活習慣の上での難病、高齢と共に出現する難病」を実際に治療できる腕を身に付けましたが、治療の最大の弊害は患者の恐怖感と好訴性でした。私は特殊な注射で治療できるのですが、患者自身が注射を拒否するのです。このハードルは「治せる医者」にとっては想像以上に大きいはずです。私たち医者は「くすりでは治らない患者」を目の前にすると多大なストレスを感じます。それは患者が治らないことに対して怒りを医者に向けるからです。はっきり言うと肩こり、頭痛、腰痛、しびれなどは薬を処方しても理学療法を行ってもすっきり治ることは少ないでしょう。それを患者に説明しても納得しないので怒りをまともに受けることになります。
目の前の患者から侮辱され不信の目で見られ、怒鳴られる医者というものは哀れなものです。しかし、それらを治せるのなら話は変わります。治すか治さないか?の選択肢を患者に突きつけることができるからです。患者は診察室に入ると同時に怒りに満ちています。痛みを治せない医者に対して「どう責任をとってくれるんですか?」という態度でやってくるものです。問題ありません。私は笑顔で「治せますよ、ただしあなたの勇気と覚悟次第ですね」といいます。そこで注射による治療法を説明し、初回治療で完治する確率や合併症、副作用、リスク、成功確率などを説明します。そして選択権を完全に患者に渡してしまいます。選択するということは治療による万一の不具合も、治療が成功しなかった場合も責任は患者自身がとるということを意味します。
それでも非常識な患者はどんなささいな不具合も許さないという構えでいるものです。例えば注射が痛い、注射の跡に貼ったテープでかぶれた、注射後めまいがした、注射後手がしびれた…などなどきりがありません。これらに対して「いつでも訴えてやる」という構えを見せつつ高飛車に迫る患者が30~40代の働く女性に多いという印象を受けます。もちろん訴えても裁判では患者が負けますが関わると大変です。
普通ならこういう患者には関わらないのが医者の常識です…が、私は勇気と覚悟を持って関わってきました。自分を崖っぷちにおいやって治療技術を上げる修行の一環として。人格障害者へのブロック注射は手が震えるほどに緊張します。その緊張感が己を高めてくれます。どんなささいな不具合も許されないからです。したがって人格障害者への注射は「痛みを極力少なくすること」が結局自分の身の安全のために必要になるのです。
痛くない注射は不治の壁を越えられる
私は数多くの治りにくい手足のしびれ、筋力低下(麻痺)の症状を完治させた実績を持ちます。さらに直腸膀胱傷害(便漏れ、過活動性膀胱)なども完治させてきました。これらは今の医学では解決策がなきに等しい疾患です。 医学書を見るとしびれはどんなブロック治療しても治りにくいとあります。ブロックを数回やっても効果がない場合は外科的な治療を考慮するとも書かれています。しかし、数回行っても効果が少ないブロック治療を数十回、数百回行えばかなり治るということをほとんどの医師は知りません。教科書の枠を超えた治療だからです。常識を超えた多数回のブロックが治せない症状を治せるという例です。例えば1つのブロック注射では治らないものを腰部硬膜外、仙骨裂孔硬膜外、神経根ブロックの3種同時で注射するなどの治療で治せることがあります。こういった発想はホームドクターならではの発想です。そして小さな治療実績から大きな実績を積み重ねて本当になかなか治らない症状を治せるようになっていきます。ただ、残念なことに、昔は自己流でブロック注射をし放題でも医師はお咎めなしでしたが、最近は国家財政の窮状と共に、自己流ブロックが監査されるようになりました。よって現在の医師の方が、はるかに自己流ブロックに勇気と責任が必要になっています。患者側だけの問題ではありません。
また、根気の必要な注射を患者が受けてくれるか?といえばノーです。注射は痛いしリスクが高い!これが最大の理由です。痛いのなら、効果が感じられない注射をすぐにやめるでしょう。また回数を重ねるほどリスクに遭遇する確率が上がります。だから根気よく回数を重ねなければ治らない「しびれの症状」へのブロック治療は「痛い注射では成立しない」ということを覚えておかなければなりません。患者に多数回の注射を困苦よく受けさせるためには痛くない注射の腕を身につけなければ無理です。よって一般的には「しびれはブロックでは治らない」と言われることになります。なぜなら注射を痛くなくできる医師は皆無に等しいからです。
痛くない注射は手術という選択肢を消し去る
世の中には注射を2週間に1回、定期的に受けられるのなら、手術を受けなくとも天寿をまっとうできる変形性関節症の患者が五万といます。確かに腕の立つ関節外科医の手にかかれば、人工関節置換手術で痛みをほとんど消失させることができるでしょう…しかし手術合併症は軽視できません。確率は低くても肺塞栓などが起これば命がないからです。自分が患者の立場であったなら、手術を受けるよりも注射で治したいと思いませんか? ですが、毎回受ける注射が痛いのなら話は別です。痛い目にあうのなら手術という大きな苦痛を1回受けた方がましという考えになるでしょう。しかし、私は膝関節も股関節も自分が治療している患者で手術に駒を進めた例は5年間で1例程度です。整形外科医には知られていませんが、特に股関節注射は効果絶大であり、手術をすすめられている患者でさえ、1回の注射で痛みがほとんど消失してしまうことがしばしばあります。注射が痛ければ患者は通院を苦痛に思いますが、痛くない注射のおかげで患者は苦痛を感じず、手術を経験しないで済むのです。高齢者はもともと運動量が多くないため、人工関節にしなくても注射治療で十分日常生活を送ることができるのです。ホームドクターに腕があれば手術という選択肢はほとんど消去できます。つまり外科医の仕事を干してしまえるのです。
痛くない注射は治療成功率を格段に上げる
注射が痛くないとなぜ治療成功率が格段に上がるのか?不思議な話です。答えは簡単です。実は各種関節内注射やブロック注射は的確な場所に薬液が入っていないことが非常に多いというのがヒントです。注射失敗例は非常に多いと思われます。医者も気付いていません(または気づかないフリをしています)。失敗の確率はほとんど患者に依存します。肥満体質、高度な変形、特殊な体型などなど、入りにくい患者には何度繰り返しても入りにくいのです。そのうえ注射手技に多くの時間がかかります。さて、あなたは注射が失敗したか成功したか?その真実を極限まで追求する勇気があるか?が問題です。勇気は行動と責任を伴います。注射が失敗していることを徹底調査すれば、患者に謝罪する義務、再度注射を行う責任、失敗をフォローする責任が発生します。これを発生させる勇気がある医者を私はかつて一度も見たことがありません。腕の立つ医者も、教授も、専門家も、こういう勇気を持って仕事をしている医者を今まで近くで見たことがありません。スーパーな医者になりたいのならここを避けてはいけないのです。失敗したら何度でも成功するまでやり直し、そのためになら土下座でもして患者に許しを乞う勇気を出してほしいのです。それができなければ成功率も治療実績も上がりません。
これらをするには注射の腕だけではなく注射の速さも磨かなければなりません。ちんたらしていたのなら、やり直しをしている時点で外来が鬼のように混雑してきます。そして…注射が痛いなら患者がリトライを拒否するでしょう。リトライを承諾させるには痛くない注射ができることが必須条件となります。痛くない注射が出来れば注射が成功するまでリトライすればよいわけですから治療成功率が格段に上がるという仕組みです。断言します。痛くない注射ができなければリトライをストレスなくすることができません。だからせっかく勇気を出して自分の注射ミスを告白したとしても、注射が痛い場合は患者に断られ、逆に不信感だけ持たれます。
この逆も真なりです。注射が痛い場合、自分の注射ミスは認めることが出来なくなるということです。注射の腕が達人級に上手になっているからこそミスに対して責任をとれます。さらに言えば、ミスがめったにないからミスした患者のフォローができるのです。ですから、自分の注射が適所に入っていないことを認識する能力は「ある意味高次元の技能」なのです。
私は初めて先輩医師から腰部硬膜外ブロックの手技を習った時点から、現在までの失敗率を記憶に残しています。習った当初、5人に1人は必ずタップしました。全員が若い、入りやすい患者でした。医者5年目でさえ10人に1人はタップしました。現在5000人に注射しても1人もタップしません。正確に言うと、タップがゼロではなく、タップしたことを察知できるので脊髄麻酔になることがないという意味です。しかも難易度の高い究極の変形脊椎・狭窄脊椎に注射してもタップミスをしません。そんな私が膝関節内注射では20人に1人くらいの割合で注射ミスを今でもします。下手だからではなく、膝に注射が入りにくい難易度の高い患者にばかり注射をするせいです。
しかし普通は医師がミスしたことにも気付かないものです。というのも私はミス注射を調べる手法も開発しました。だからミスとわかるのであって、そういう手技を身に着けていなければミスしたこともわかりません。ミスとわかれば再度行う。注射の腕がかなり上がっているのに、ミス注射を患者に謝罪する姿は滑稽でもある。まさか患者に「あなたの膝が入りにくいのが悪いんですよ」ともいえません。それらができるのはすべて「痛くない注射ができるから」というところに帰依します。再度断言します。痛くない注射ができなければ、注射成功率は上がっていきません。
各種ブロック注射のハードル
肩こりを治せる医者は世界にいないいでしょう。ですが真実は違います。頚部硬膜外ブロック、または頚部神経根ブロックを行えばがんこな肩こりも完治させることができることを医者ならば誰もが知っていますし、実際にそうした治療も行われています。ですが一歩間違えば意識が消失し呼吸もしなくなるようなリスクの高いブロックを、いかに安全にできようとも患者に安易にすすめてはいけません。それは医の倫理です。頚部硬膜外ブロックは、やってみると案外手技がたやすく、保険点数も高いのでリスクを説明せずに患者に軽い気持ちでやってしまうペインの医者がいますがそれには同意できません。手技がたやすくても、万一ミスをすれば生命のリスクと隣り合わせだからです。ブロック注射治療には失敗というリスクがつきまといます。そのリスク、痛み、恐怖、責任というマイナス面と症状が治癒する価値の高さというプラス面のシーソーにより、注射を行うか行わないかという究極の選択があります。それを安易に決めてはいけません。
頚部硬膜外ブロックのリスクというマイナス面は、肩こりを治すというプラス面よりもはるかに大きいため治療がカジュアル行われることはまずあり得ません。だからこそ肩こりを治せる医者が世界にいない…となるわけです。もしもマイナス面を極端に減らすことが出来るのなら、肩こりは治せます。そして私はマイナスを極端に減らすことができる傍神経根ブロックを開発しました。マイナス面を言及せずに効果だけを前面に出して自分を宣伝することは医の倫理に反します。・・・が、反している著名な医師は世界にごまんといるように思います。
腰痛も膝の痛みも効果が絶大な治療は存在しますが、その治療のマイナス面を縮小させることができないので簡単には治療ができません。よって慢性不治の痛みになるという図式があります。逆に言えば、マイナス面を縮小できれば様々な不治の病を魔法のように治していくことができるということを意味します。名医への道は「リスク縮小にあり」と言ってよいでしょう。
私は過活動性膀胱も完治させることができると述べました。過活動性膀胱は痛みもなく、がまんすれば日常を送れる疾患です。腰(仙骨)部硬膜外ブロックを何度か行えばほとんどの過活動性膀胱患者が症状軽快または完治しますが、それは教科書的には知られていませんし実行も難しいでしょう。なぜなら腰部・仙骨硬膜外ブロックのリスクや注射への恐怖が症状を治癒させるメリットよりも大きいからです。治療のシーソーは注射拒否に傾きます。再度言いますがマイナス面を縮小させないと実用性に乏しいのです。
さて、患者にとってもっとも大きなマイナス面は注射が痛いという恐怖です。医者が考えればタップや血腫、感染などの方が恐ろしいですが、患者にとっては「痛いか痛くないか?」のみがリスクの大半を占めます。特に「痛くない症状」を注射で治すのなら「痛くない注射」が必須条件となります。「痛くない注射」ができれば医者としてもかなり自信を持って患者に注射をすすめることができます。そして日常の難病に苦しむ大勢を救うことができます。
本来は医師の立場からするとタップをしない、ミスをしない、デリケートな手技を身につけることがマイナス面の縮小になりますが、患者は痛いか痛くないか?で全てが決まると言っても過言ではありません。私の外来にはペインクリニックの大家のブロックを受けていた患者も来院しますが、私のブロックよりも痛いので患者は私の治療に乗り換えるものです。
患者は医者を信じていない
最近の患者はインターネット普及の影響により、医者に対する不信感を誇大にふくらませていると考えて間違いありません。都心部には特にそういう患者が多いようです。情報が氾濫しているために患者が自分に都合のよい情報だけを聞き入れようとすることに原因があります。特にリスクや恐怖に関する情報には過敏反応します。「硬膜外ブロックをしましょうか」というと「すごく痛いって聞きますけど」と返事が返ってきます。「私の注射は痛くありませんよ」と言っても患者はまず信じません。痛さよりも怖さです。さらに患者はブロック注射で完治すると信じていません。どうせ一時しのぎのごまかしとしか思っていません。ブロック注射が一時しのぎではなく、ブロック周辺部の血流を増加させて早期治癒に向かわせると言われ始めたのは最近のことですから、過去の医師たちでさえブロックを一時しのぎと思っているふしもあります。さて、そんな医者不信の患者には注射治療をしてはいけない! それが医者の常識ですが、実はそういう不信感で満たされた患者を治療できる腕こそが一流の証明です。不信に満ちた患者に注射をすすめると小さなトラブルを誇大化され、大きな成功を矮小化される可能性が高いでしょう。だから毎回真剣勝負になりその結果自分に厳しい治療実績を得ることができます。だから腕が上がる→だから不信の患者にもすすめられるようになる…を繰り返し、極めて客観性の高い実績が積まれていきます。キリスト教では「信じる者は救われる」ですが、スーパーホームドクターは「信じない者さえも救える」のです(自己犠牲を伴いますが…)。
私は患者から不信感を抱かれることに怒りません。自分の注射の技術が高いことを宣伝もしません。開業していませんでいたので宣伝すると外来が混み、自分の首が締まるからです。だから初対面の患者は私を信じる材料がありません。しかし初対面から注射をすすめています。だから注射をすることは崖っぷちでした。崖っぷちはいい眺めです。緊張感に満ち溢れ、自分の腕が毎日上がっているのを実感できます。逆に言うと、崖っぷちが欲しいために「専門外来」を名乗りませんでした。専門を名乗ると不信感に満ちた患者が来院しなくなるからです。
初対面で私を信用じようとする患者が集まれば、私は天狗になってしまいます。修行中の身である私がそれをやってしまえば医者修行が終わり成長が止まります。腕を上げたいのなら楽な道を選んではいけません。四面楚歌の状態が切磋琢磨の機会を与えてくれます。
おわりに
痛くない注射は訓練すれば一般内科、一般外科の医者にも十分にできるようになります。患者に「痛いという苦痛」を与えないですむことがわかれば、注射のミスも恐れずにすみます。すると注射をすることへの自分の心の中のハードルが低下していくことを実感できるようになるでしょう。私は常に難易度が高い注射ばかりに挑みました。へバーデン結節も注射で痛みを取り除き、腫れを引かせることができます。顎関節症にも注射ができます。難しい注射の保険点数が高いわけではありません。対労力を考えると難しい注射は患者へのほぼ無償奉仕です。さらに私だけができる特殊な注射手技は保険に掲載されていません。よってまことに理不尽ですがそれらもほぼ奉仕注射となりますが、それでも技術を磨くために精進しました。ですがこう考えています。理不尽でコストパフォーマンスが悪い注射ほど、他の医者にはできません。ならばそこを追究すれば他の医師には治療できない症状を治せる一流の医師になれるでしょう。そして多くの日常難病の患者を救えるでしょう。痛くない注射はそういった全ての治療の最初の第一歩なのです。
初めまして。ヘルニアからの坐骨神経痛で困っております。
3年前位にゴルフで腰を痛めて以来、ゴルフをするときには必ずコルセットをしてる様な状態でした。
昨年の10月頃から右のお尻に、こりが出てきて、よくマッサージで揉みほぐしてもらっておりました。そんな状態であまり大した事もないのでほおっておりました。ところが、3月ごろから、ゴルフスイングの時に、ぴりっとする様な痛みに変わって行きふとももの裏当たりにも痛みが出て、5月初めからは、全くゴルフにいけない程痛みが強くなりました。それで、6月14日に仙骨ブロック1回、それから1週間おきに腰部硬膜外ブロック(仙骨ブロックが全く効果なしの為腰部硬膜外に変わった)、2回、計3回のブロックを行いました。結果は、あまり効果は無かった。で、あと数回、腰部硬膜外ブロックをして効果無しであれば神経根ブロックをする、といわれております。先生の論文を見ているだけで、私には神経根ブロックをする勇気とメリットがない事が分かりました。
是非共、先生の診察を受けたいと思ってのコメントと成りました。
どうぞ宜しくお願い致します。
追伸、上分の、患者にとっては「痛いか痛くないか?」のみがリスクの大半を占めます。
この文章を見て、患者の気持ちを十分理解されている先生だなと思いました。
56歳 男性
坐骨神経痛に腰部硬膜外ブロックがあまり効果がないときは、神経根ブロックが適応になります。神経根ブロックを安全に痛くなく、愛護的に行いたいという希望があるようですので、私が治療させていただきたいと思います。
神経根ブロックはブロックの中では最も値段が高い手技ですので、厚生労働省が「たやすくこのブロックを医師が行えないようにするための制約」を設けています。それが、神経根に造影剤を流し、透視下にこれを同定することを必須条件とする、というものです。つまり、造影剤を用いて神経の走行を確認することを義務化し、「簡単には行えないように」しています。この義務化のせいで、医師は必ず神経に針を刺し、造影剤を流し込むことを行わなければなりません。だから極めて痛い治療になります。
私は寸止め技術を持っていますので、神経根の外膜に触れるか触れないかの場所に造影剤を流すので、痛みが来ません。ご安心下さい。ただ、寸止めで治るのか?という心配もあると思いますが、「治ります」。極めてよく治ります。つまり、寸止めと実際に刺す場合に治療成績に差がありません。多くの医師たちは、寸止めをしませんので、「差がない」ことを知るすべがありません。
初めまして。母に代わり書き込みます。
72才慢性腎不全で週3回の人工透析治療を始め29年です。足に痺れがあり数年前に脊柱管狭窄症とすべり症と診断を受けました。現在は痺れが強くなり間欠性剥行の距離も数メートル間隔になってしまいました。
現在手術を検討する為に都内の大学病院に検査に行く予定がありますが、透析患者という事で血液の固まり難さやアミロイドの事で受け入れて下さる病院が少なく手術には消極的です。また有名な整形外科の病院も透析施設がないので受け入れられないとの事でした。
ですが、長年病気と付き合いながら日々色々な痛みを我慢してここまで生きてきた母が骨を削り筋肉を断つ手術を命がけで受けても、数か月で元に戻ったり新たな痛みが出てしまったらと思うと、出来るだけ手術はしないで今より少し良くなった状態で維持出来ればという思いに至り模索している中でこちらにたどり着けました。
人工透析患者でも先生に治療をして頂くことは出来ますか?
本人に代わりお伺いさせていだだきます。
どうぞ宜しくお願い致します。
透析患者の場合のブロックリスクは硬膜外腔に血腫が出来る可能性が一般人の何倍も高いところです。よって硬膜外ブロックを行わず、神経根ブロックのみで治療するという方法もありますが、L5(第5要神経)のブロックは脊椎の高度な変形があると不可能となります(診てみないとわかりませんが)。その場合は硬膜外ブロックを行うしか方法がありませんが、ブロック最中は血腫は起こりにくいものです。しかし、その後の透析中に血腫ができる可能性が「普通の人より高い」でしょう。
私は25G というかなり細い針を用いてますので、血腫のリスクは低いですが、万に一つ以下の可能性として血腫ができてその血腫が腰髄を圧迫し、下肢麻痺が起こる可能性を否定できません。その際に、普通の人なら手術を行い血腫を除去できますが、透析患者の場合、手術ができないことも想定しなければなりません。
私のブロック技術は極めて高い部類に入ると思いますが、血腫の発生確率をゼロにできるわけではありません。おそらく血腫をつくるようなことにはならないと思っていますが保証するものではありません。そうした現状の中、本人がどうしても治療を受けたいという強い意志がおありでしたら来院ください。ルートブロックでは髄内に血腫はできません。ただしルートブロックも100%安全ではありません。医療は経口薬一つでもリスクがあります。そのリスクと向き合い、現状を打開し挑戦するかどうかは究極の選択となります。私は患者に強い決意があれば、厄介事も引き受けます。