腰痛・治療の医学

治療の医学について

医学とはそもそも病気で悪化するその仕組みを研究し、病態を学ぶことで進歩してきました。これは悪化の医学であり西洋医学はそのほとんどが悪化の医学です。逆に病態はともかく「どうすれば治るか?」だけに焦点を合わせ、治る方法を手探りで試していき、治療方法を確立するのが「治療の医学」です。鍼灸や東洋医学、そして広くは祈祷や超能力で治癒させるのも「治療の医学」の範疇に入るでしょう。理由も理論もなく、ただ治ればいいと考えると学問は発展しませんから、西洋医学は「治療の医学」を大変嫌います。中にはまやかしや悪徳商法が存在するからです。
  さて、私が行っている治療の医学は治療法が医学的に確立されているものだけを用いて試行錯誤で教科書に掲載されていない方法で治していき、治療法を手探りで探していくというものです。たとえば、坐骨神経痛の人に腰部硬膜外ブロックをする。すると2日間はすっかりよくなるが3日目からは痛みがぶり返すといいます。ならば「1日おきにブロックをすれば完治に近づくかどうか?」というように治療の回数を増やして治るかどうかを試行錯誤するというものです。
現代の最新の医学書にさえ「回数を増やすとどうなるか?」ということは書かれておらず、ここから先は治療してみることでしか治せるか治せないか?がわかりません。もし、回数を増やすことでこれまで治せなかった坐骨神経痛患者を完治させることができれば、新しい治療法が確立します。これが治療の医学です。ただし、今の医学知識を用いても「回数を増やせばなぜ治るのか?」の理由は解明されることはありません。したがって新しい治療法は西洋医学者にとっては「根拠のない治療」ということで拒絶される傾向があります。
たとえ拒絶されても私がその治療を行い、患者を治療していけばよいのですが、それでは多くの人を助けることができません。そこで少しでも私の「治療の医学」を普及させるために、なぜ治るのか?の原理を推測して、このように掲載しているわけです。ここでは腰痛に関する治療の医学をご紹介します。

痛みを治療する方法は一つではない

私たち整形外科医は、腱鞘炎が起きていれば腱鞘内注射をして治し、靭帯炎が起きていれば靭帯に注射してこれを治し、筋肉炎が起きていればトリガーポイント注射をしてこれを治してきました。膝関節が痛いのなら膝関節に注射をして治します。これらの治療は決して一時しのぎの治療ではなく、注射をすることで治癒していきます。当然のことですが膝が痛いと訴える患者に神経根ブロックを行う医者はいません。足首が痛いと訴える患者に腰部硬膜外ブロックを行う医者はいません。理論的には「痛みは神経が伝える」わけですから、その神経をブロックしてしまえば痛みはおさまるわけですが、それをしない理由は、ブロックの薬が切れると、再び膝や足首が痛くなることが予想されるからです。
これに対し膝が痛い患者に膝関節内注射を行うと、膝関節内の炎症がとれて治療となるわけです。だから膝関節が痛い患者に、医者は神経ブロックを行わず関節内注射をすることを選びます。ところが膝に注射しても治らない例外があるのです。例えば、北朝鮮の金正恩総書記は脚を引きずって歩いていましたが、ヨーロッパから足の手術の専門家を呼び寄せて手術をしたそうです。私から言わせれば、恐らく手術は無駄だったと思います。その理由は以下の文にあります。

膝痛にブロックが効く

私の外来には他の医者が治せなかった、どうやっても治らなかった、患者たちが多く訪れます。当然ながら「膝が痛くて他の医師に膝関節内注射を3年間毎週やってもらったけど全然治りません」というようなつわものばかりが私の外来に訪れます。他の医者に手術するしかないと言われた患者がやってきて、それでも私はほとんどの患者を手術せずに生活ができるレベルにまで治しています。どうやって治しているか?実は神経ブロックなのです。
私の外来には「どうやっても治らない」患者ばかりがやってきます。それなのに普通に膝関節に注射するだけで治せるはずがありません。だからいろいろと試行錯誤し、ある事実を突き止めたのです。それはアロディニアです。アロディニアとは通常では痛みを感じるはずのないような刺激で痛みを感じてしまうという過敏状態のことをいいます。神経系がどこかで障害を起こしていると、通常では感じないほどのごくささいな膝の痛みを激痛として感じ取ってしまうということです。患者は膝を曲げ伸ばししたときに激痛を感じるので「膝が悪い」と思い込みます。
医者は膝に注射すると一時的にでも痛みがとれるのでますます「膝の痛みは膝から来ている」と思います。しかし事実はそうではありません。注射は数十分しか効果がないからです。真実は「膝関節の痛みはわずかであり、そのわずかな痛みがアロディニアによって増幅されて激痛になっている」と考えています。この場合、どこを治療すれば膝の痛みが治るのでしょうか?それは膝ではなく脊椎から来ている神経のほうでしょう。だから膝の治療に神経根ブロックが抜群の効果を示すわけです。他の医者には「膝が痛い」と主張する患者に神経根をするなどという一見とんちんかんな治療ができるはずがないので治せません。日々研究を重ね、とんちんかんな治療を真の治療へと昇格させてきた私は、他の医者が治せなかった膝痛患者を治癒させていけます。
アロディニアの仕組みはまだ一部の専門家しか知りませんから、一般的な整形外科医にはこの知識は普及しておらず、いまだに「痛みが全く軽快しない患者」にも延々と膝関節に注射しつづけています。もちろん治りません。治らなければ手術をすすめられ、実際に手術(膝関節全置換術)を受けた方は全国に多数おられますが、それでは痛みが一部しかとれないのです。確かに膝の根本的な痛みは軽くなりますが、アロディニアは治っていませんからちょっとした拍子に激痛が走ります。本来ならば手術などしなくても済んでいたはずですが…、全国にはこういった被害者があとを絶ちません。私は恐らく金正恩総書記の足根管症候群?の手術も無駄だったのではないかと思っています(もちろん単なる憶測です)。恐らく原因はアロディニア(異痛症)にあると推測するからです。
こういったアロディニアの知識が全世界の整形外科医に普及すれば少しは被害者が減るとは思われますが、しかし、普及したとしても問題は山積みです。整形外科医のブロックをする技術が高くないからです。膝の痛みに試しにブロック注射をするというような軽い気持ちで患者にブロックをすすめられるまでに、技術を高めなければならないからです。ブロックは未熟な医者がすれば神経を傷つけたり、注射自体が非常に痛かったり、合併症を作ったりと大変危険なものです。鼻歌まじりで安全に素早く的確にできるようになるまでには相当の年数、修行を積まねばなりません。だからアロディニアの知識が普及しても、ブロックは普及しえないという問題に突き当たります。

腰痛がアロディニアで生じることを誰も知らない

これまで腰痛は筋肉・筋膜、関節や靭帯、あるいは椎間板などから痛みが発生すると考えられていました。もちろんそれは間違いではありません。しかし、先ほど述べた膝痛の患者と同じで、腰痛も「毎週病院に通って腰に注射しているが治らない」という患者があまりにも多いのです。何度も申し上げますが、私の外来には「他の医者が治せなかった腰痛の患者」多く抱えています。彼らに普通の整形外科医が行うような治療をしていても腰痛は治せません。
さきほどと同じ原理で腰痛にもアロディニアが存在します。神経根が炎症を起こしていると「本来ならばそれほど痛くないはずの小さな腰痛」がその何倍もの痛みとして誇張されてしまうということです。さらに最近判明したことですが、神経根の炎症ではなく、脊髄の後角細胞レベルの炎症で異痛が起こるようです。痛みを感じている場所よりもかなり上の脊髄で炎症が起こっています。
脊髄レベルで炎症(損傷)が起こり、これが難治性腰痛の原因になっていることを推測したのは、恐らく私が世界で初めてであり、この推測はまさに「治療の医学」が可能にしました。詳しい解説は「難治性慢性痛への取り組み」をご覧ください。腰痛ですから原因はあります。荷物を持った、長時間座っていた、捻ったなどの原因があるはずです。そしてそこには筋・筋膜炎、関節炎、椎間板炎などの病態もそんざいするはずです。しかし、それらが腰痛の原因の全てではありません。本来ならばそれらの痛みは我慢できる程度のわずかな痛みかもしれないのです。しかし神経根炎(脊髄後角炎)があるおかげで激痛となって歩けないほどの状態にさせているわけです。
この場合、筋肉や関節付近に注射するのと、神経根(交感神経節)ブロックなどを行うのとどちらが治療になっているのか?それは明らかにブロックが治療になっているわけです。私は数々の治療データを実際にとり、どこの腰痛にどの神経根をブロックすれば治るのか?を徹底的に調べ上げました(別記)。そして治りにくい腰痛の半数を1回の治療で治しています(もちろん半数の方は一度では無理です)。私の治療法は「治療の医学」であり、なぜ治せるか?の明快な根拠はありません。アロディニアの理論、脊髄後角炎の理論でさえ普通の医師たちの想定外です。ですから私の意見が絶対に正しいとは決して言いません。しかしそんなことはどうでもよいのです。先生方!患者を治してあげてください。それだけです。慢性腰痛の苦しみは想像を絶します。

腰痛はブロックで治す

おそらく、臨床的に現場の医学で腰痛に硬膜外ブロックを行えば、割と多くの患者(私が治療した実績では約半数。他の医師では半数が治るということはないと思います。)が一度のブロックで治るということを整形外科医でしたら実地経験でご存知のことでしょう。長年患っていた慢性の腰痛も一度で治ることが少なくないことも経験します。なぜ治るのか?は解明されていませんが、とにかく治るという事実はご存知でしょう。しかし、知っているのにそれができない理由を考えてみましょう。
それは安全性です。腰部硬膜外リスクは神経や血管を傷つけるリスク、深く入りすぎるとショックを起こしてしまいかねないリスク、感染の危険、患者を痛がらせてトラウマ体験させてしまうなど、そういったものがあるために患者にたやすくすすめられないという理由があります。では失敗がゼロに果てしなく近づくまでに腕を上げればよいではないですか。腕が上がれば失敗の割合は1000回に1回、10000回に1回となります。このレベルになるころには、どんな変形した脊椎の持ち主にも硬膜外ブロックを行えるようになっているはずです。しかも患者を痛がらせないこともできるはずです。
腰痛に腰部硬膜外ブロック→「なんて無謀な!」この発想を止めなければ腰痛患者を治せません。無駄な脊椎手術の被害者も増えるでしょう。先ほど述べたように、腰痛にブロック=無謀、ではなく、アロディニア説が真実であったら、腰痛にブロック=唯一の治療、となります。治療の医学…バカにせずに実際にやってみることを強くお勧めします。確信を持って言いますが、痛くない背骨を維持することができれば背骨の変形の進行は遅くなります。つまり、痛み治療は痛みを取るだけではなく、背骨の寿命を延ばします。このいびつな超高齢化社会に必要な考え方です。
スポーツドクターはプロスポーツ選手の痛みを取り除くために、少々無謀な治療をすることはよく知られています。その治療の範囲を一般の労働者たち、主婦たちに広げればよいだけのことでしょう。ただし、ブロックの適応範囲を広げるためにはそれなりに腕を磨かねばなりません。これからは医師とて不況の時代。治せる技術を身につけなければ患者が離れて行ってしまうでしょう。医療費を削減されても生き残れる医師になるために、整形外科医だけではなく、硬膜外ブロックは訓練を積めばどの科の医師にもできることですので、この期に挑戦されてみてはいかがでしょうか。

腰痛・治療の医学」への11件のフィードバック

  1. 手術の後遺症で、痛みとしびれで困っています。もし良ければ、受診したいのですが、場所を教えていただけないでしょうか?よろしくお願いします。

  2. どうか、痛みと戦っている父を一度診ていただけないでしょうか?どうか藁にもすがる思いです場所を教えて下さい。どうかよろしくお願い致します。

  3. 五月に難治性下肢痛診断され、落胆してます。エピドラスコピーの治療を勧められておりますが、有効率や有効期間が六か月ではなかなか納得行きません。先生の医院の所在地を教えて頂きたいと存じます。宜しくお願い申し上げます。

    • 難治性と言われているのでしたら、「納得するしない」ではなく、「リスクが少ないならなんにでも挑戦する」気構えがあった方がよいと思います。エピドラスコピーはリスクが低いのでかたくなに拒むのは適切ではありません。

      私は難治性疾患を治そうと人一倍努力している医師ですが、それでも、手術の方が効果があると思われる場合は手術を勧めることもあります。上記の内容だけでは詳細がわかりませんので、何ともお答えできませんが、まずは私の治療を受けてみるというのも一つの方法ですので、ご連絡差し上げます。

  4. 線維筋痛症と診断されたことがあります。首、肩、背中、腰、前腕に慢性疼痛があり、時に膝も。痛み止めNSAIDsはあまり効かなくなりました。マッサージ、針、筋膜リリース、どれも奏功しません。あまりに辛く、生活の質が下がり過ぎて、痛みをなんとかしたいです。治療を切に望みます。

    • 線維筋痛症という診断名は「ゴミ溜め」です。原因不明で多発性の痛みがある方を便宜上そう呼ぶだけであり、それが証拠にこの診断名がついた方は、政府から何の保証も受けられませんし、障害者の等級さえ与えられません。ブロック治療さえ認められていません。つまり病気として認められていないので治療ができないのです。また、訴訟になってもこの病名では全く無視されて勝ち目がありません。つまり、病名であって病名ではなく病態なのです。だからゴミ溜め」です。病名をつけてもらったのではなく、ゴミタメに捨てられたというのが真実です。

      「不可解な痛みがある患者に対し「うつ病」という診断をつけるのと同じです。慢性疼痛の患者の最大の問題は、「医者不信」「医学不信」に陥っている事であり、患者が「自分が信じた治療」しか行わなくなっているところです。そうした精神的なゆがみが、線維筋痛症の方には必ず存在するので治療が難しくなっていることがあります。これが線維筋痛症の方が精神科にまわされる最大の理由です。慢性疼痛の原因は多岐に渡ります。その一つ一つを考えていく事はとても大変なことです。ましてや、その一つ一つのアドバイスに不信感をもたれるようでは、治療が前に進む事はありません。これが線維筋痛症の患者全員に共通した難題です。

  5. 腰痛に20年以上悩まされています。何軒もの病院で検査しましたが、加齢による軽いヘルニアだの滑り症だの決定的な病名もないまま、投薬とブロック注射を3年以上続け、どちらも効果はありません。最近、精神科に回されるのも無理ないかなぁと思うようになりました。痛みは本人しか分からないので自分は弱い人間なのか?とか甘えているのか?等気持ちもネガティヴになりそうです。治らなくてもせめて納得出来る病名ならガマンも出来るのに・・と思います。
    確かに、痛みを我慢したら家事も仕事も何とか出来ています。でも、辛いです。疲労感も倦怠感も常にあります。
    いつか治ると信じて上手に付き合うしかないのかなぁ…

    • ブロックを行っても効果のない痛みというものは、その原因が腰椎には存在しない場合があります。それを「脳の誤作動」という場合がありますが、現代医学ではお手上げです。つまり病名がつきません。別にあなた自身の精神が弱いからではありません。根本的に治すには生活環境を徹底的に改善することが必要になりますが、改善のやり方は自分で研究していくしかありません。
       改善には長い年月と真実を見ようとする目を養う必要がありますが、それにはまずは心を鍛えていく必要があります。しかし、どうすれば心を鍛えられるのかについては、私があなたにアドバイスすることはできません。その理由は、「心」とは「人間がこの世に生まれた意味」であり、それはあまりに奥深く、言葉で表すことができないからです。言葉に表すと嘘くさくなり、ますます信憑性が失われます。

       痛みが「この世になぜ生まれたか?」の意味を見つめ直す機会になることがあります。かなり抽象的ですが、「真実を見る目」を養うことが一番の解決策だと思います。

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