治療学総論

治療学総論

私たちの組織・細胞は重力・空気圧・細菌・体内の酵素・熱などによってリアルタイムに常に破壊され続けています。しかし症状は出ません。症状が出るのは次のような場合です。
  1.  瞬間的に大量の細胞が破壊される(外傷など)
  2.  細胞の再生スピードよりも破壊スピードが上回る(感染など)
  3. 細胞適応が起こり(石灰化、アテローム硬化、変性、腫瘍化など)恒常性が崩れる
  4.  除去不可能な老廃物含有細胞の蓄積(活性化酸素など)

ここで治療とは何か?を考えます。
  • 1-A 物理的に不良細胞の除去、構造の再構築・置換、などを行う
  • 1-B 機能の調整(刺激、抑制)
  • 2-A 細胞の再生スピードを上昇させる 血行・代謝・浮腫などの改善
  • 2-B 細胞破壊スピードを低下させる 安静、破壊原因の除去
  • 3、細胞適応化した細胞の除去(外科治療、穿刺、排泄、隔離)
  • 4、老廃細胞の除去(移植、置換術、自己抗体の強化、隔離)

ほぼ全ての治療はこの中のどれかに分類されるか組み合わせで成り立っています。そして、治療に際してはこの中のどれを行っているのか、どんな問題点を抱えているのかを意識することが未来の医療につながります。未来の医療とは「どれかを治すことで他の組織のどこかに必ずそれ相応の負担を強いる」ことを考える医療です。
これまでの医学は治療の効果ばかりを学者たちがうたってきたため、副反応については常に無視され続けてきました。治療には必ず何かの犠牲を伴うことを誰も述べてきませんでした。 実際、副反応は全てに存在するので、例えば内科で使用している薬が、外科では治療の障害になっているというようなことが必ず起こっています。すべてが改善につながる完全無欠な治療はそもそもありません。
例えば尿酸の合成を阻害する薬剤を用いれば尿酸の前駆体である細胞の死骸であるプリン体が増えるという害を必ず起こします。細胞の老廃物であるプリン体が血中に増えるとどのような障害を起こすか?が研究されていないのが現医学です。尿酸合成阻害薬で血液中の尿酸を減らしたしわよせは、血中のプリン体を増やすという害をもたらしますが、その害が判明していないから無視されているという状況を認識しておくことが未来の医師の責務です。将来的にはそこまで考える医学に発展していかなければなりません。
治療とは体内で一時的な改善スペースを作ってあげる作業のことを言い表し、そのおかげで他の組織の運営スペースを削り取ります。つまり、必ず何かを必ず犠牲にすることが治療であるという概念を持つことが必要なのです。 何を犠牲にしているのかの概念を持たずに、現代医学は発達したため、人間が長生きするようになると様々な「医学で解明しきれない不定愁訴的症状」が増えてしまいました。 その不定愁訴は、健常人であれば害がないものでも、ある疾患を持っている患者では最悪な症状を引き起こすことがあります。
ここで最重要事項を再度述べておきます。 「治療とはしわよせ作業以外の何でもなく完全無欠の治療は存在しない」 ということです。しわをよせた結果、どの症状の改善にどう影響し、どの組織にしわが寄っていくのか?を常に考えなければ、医療に未来がありません。そして医師たちは「そのしわ寄せは自分の科の疾患にしわがよるのではないから興味がない」という態度でいることに恥ずかしいと思わなければなりません。しわ寄せによる患者の不定愁訴を無視する医療を行うべきではありません。 そしてこの最重要事項を医師だけが認識していればよいわけではなく、広く一般大衆に広めなければなりません。
  1. 治療には必ず犠牲を伴うこと(どこかにしわ寄せが行く)
  2.  一般的に治療効果が大きい治療ほど犠牲が大きくなること
  3. 犠牲が大きいにもかかわらず治療効果が不定である治療をこの世から抹殺していく勇気を持つこと
  4.  犠牲が小さく治療効果が大きいが、過度に犠牲報告が広まっている治療を再研究する勇気を持つこと
  5. 犠牲は各個人の持病によって大きく変化することを前提に、持病と犠牲の関連を次々と研究していくこと
右ファイルに治療としわ寄せに関し表にまとめました(治療としわよせpdf file)。
治療をミクロ的に見るならば上の表(pdf file)のような見方ができ、治療により生じるミクロ的なしわよせ(副反応)が理解できます。 私たちは今後、こうしたミクロ的な反応が人体にどんな影響を及ぼすのかを正しく研究していかなければなりません。

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