はじめに
腰部脊柱管狭窄症という病名は非常にあいまいである。脊柱管が狭窄すると定義されるのみであり、骨性の狭窄か?すべりの狭窄か?椎間孔の狭窄か?ヘルニアによる狭窄か?後方からの狭窄か?狭窄によって圧迫を受けているのは、馬尾全体か?神経根か?脊髄か?後根神経節か?症状から推測する病態生理が、血行障害なのか?神経障害なのか?その原因は摩擦なのか?張力なのか?圧迫なのか?判明しないままに漠然と治療するという悪しき現状がある。「きっちり診断できていない状態」で手術に挑むからこそ、脊椎の手術成績は低いと言わざるを得ない。また、狭窄が著明であっても無症状である症例や、狭窄がほとんどないにもかかわらず間歇性跛行が著明である例などがあり、外科的治療を施すための一定した基準がなく治療法選択においても混乱しているのが現状である。ここでは極度に脊柱管が狭窄していても手術適応とならない症例をあげ、腰部脊柱管狭窄はMRI画像で狭窄が高度であっても症状が出ない理由を考察し、狭窄が強ければたやすく外科治療を行おうとする脊椎外科医に警鐘を鳴らす。
症例
78歳男性現病歴
腰痛、下肢痛なし、1年前から100m歩くとしゃがんで休憩をとりたくなるという間歇性跛行が出現。1か月前より両足底に「じゃりを踏んでいるような知覚異常」が出現したため当院を受診。MRIでL4前方すべり、腰部脊柱管狭窄症と診断される。現症
- DTR: 左右PTR減弱 左右ATR消失、Pathological Reflex(-)
- Tension Sign(-)、MMT=all 5
MRI
- 正中矢状面T2強調
- L4/5で著明な狭窄を認める。
- L4の前方すべりは9㎜、脊柱管の前後径は4.5㎜と著明に狭窄している。
L4/5における水平断T2強調
濃い黄色で着色した部分が狭窄した脊柱管。これの断面積はすべりのない正常脊柱管と比較すると約20分の1である。緑がL4の下関節突起、そして薄い黄色がL5の上関節突起。茶色に着色した部分は黄色靭帯と関節包であるが、画像上両者は明瞭に区別されない。 L4/5の高位で断面積が20分の1になるほど狭窄しているわけだから、L5以下に厳しい馬尾神経症状が出てもおかしくない。しかし実際はL5の根症状は全くなく、敢えて根症状というならば左右S1の領域(足底)に知覚異常があるのみである。左右S1の根症状をどう解釈するか?がこの病態の鍵
この症例ではこれだけ厳しい脊柱管狭窄が存在しながら、馬尾型の神経障害を来さず、左右のS1の知覚異常のみが存在する。そして痛みもテンションサインもない。これまでの馬尾型の脊柱管狭窄症の分類にあてはまりきらない。こういう不可解な病態を読み解くにはこれまでの脊柱管狭窄症の考え方を一度頭から拭い去る必要がある。さて、あなたはS1の知覚障害の原因はどこにあると考えるか?頭を働かさないで回答するとすればL4/5の狭窄で偶然にも両S1ルートだけが絞扼されていると確率的にあり得ない方向に考えるだろう。そんなファンタジーはやめて、少し数学的に考えることにしよう。
L4/5で断面積が20分の1になるほどの狭窄が存在し、その狭まった空間の中に左右L5、左右S1、左右S2、左右S3、左右S4、左右S5の合計12本の神経根が走行している。この12本のうちの左右S1の2本だけが絞扼されるなんてことが数学的にありうると一体誰が考えるだろう?
L4/5を通る12本の神経根はバラバラに不規則に並んでいるわけではない。Wall EJらが示したうように最外側にL5、そのすぐ内側にS1,そして中央にS2からS5が規則的に並ぶ。いわばS1は端にあるわけでなく中心にあるわけでなく、その中間に位置する。そんな半端な場所にある神経根が左右対称にL4/5で絞扼されるなどと考えるべきではない。そこでMRI画像をさらに詳しく観察し、S1ルートの軌跡を追うことにする。
- 以下、かなりマニアックなMRIの読影を解説するので興味のある方はこちら
- ざっと読みたい方はそのまま読んでください。
症例の検討
この症例ではMRIでL4/5で著明な狭窄像(断面積の約20分の1)を認めた。この狭窄部位にはL5からS5までの合計12本の神経根が走行する。この圧倒的な厳しい狭窄を認めながらも、臨床症状は乏しい。100メートルという間歇性跛行(以下IMCと呼ぶ)が主たる症状であるが、重だるくなる場所は両ふくらはぎに限定されている。すなわち左右S1領域にのみIMCの症状が出現する。そして主たる症状の二つ目は両足底の知覚異常であるが、これも左右S1領域の症状である。ここまでS1に限定された症状を呈しているため、今回の症例ではS1のルート走行を中心にMRIを読み解くことにした。以下にわかりやすくイラストでその走行を具現化した。 MRIでは左右S1ルートはまず
- 1、L4/5で著明な圧迫を受ける。
- 2、そのやや下方のL5椎体レベルでは肥厚した黄色靭帯によって両外側に圧排されることになる。
- 3、こうしてL5レベルで最外側を走行する両S1はL5/Sの関節突起によって正中に押し戻され、その際に圧迫を受ける。
- 4、これだけジグザグ走行をするとS1は張力を強く受ける。この張力と3の正中への圧排で椎間孔入口で骨性の圧迫を受ける。
- 5、これだけの張力がかかると後根神経節(DRG)は張力を受け椎間孔で損傷する可能性が高まる。
この5か所のうちどこか1か所にでも原因があれば根性症状が発症する。その発症確率は他の神経根よりもS1で高い。そして根症状の原因は5つ全てである可能性もある。原因は単純ではないが、ここまで深く考察して初めて真実に近づくことができる(私の考察が真実であるとのべているわけではない)。脊椎学はこれほどまでに理解することが難しい。MRIを数分ながめてわかるような単純なものではない。
考察
脊柱管狭窄症は黄色靭帯の肥厚で起こる?再考
腰部脊柱管狭窄症の多くで黄色靭帯が関与していることは周知。しかしそれは肥厚するせいではない。まずはこの症例の黄色靭帯の断面積を調べてみる。 方眼紙法で計算したところ狭窄を起こしている上の椎間(L3/4)の黄色靭帯の断面積は128㎟。実際に狭窄を起こしているL4/5の椎間の黄色靭帯の断面積は121㎟と、逆に少ないくらいである。つまり実測では肥厚していない。このように黄色靭帯が肥厚しているから狭窄が起こるわけではない。棘突起間が潰れて黄色靭帯を脊柱管内に押し出すから狭窄が起こる。同じ症例であってもL4/5が後彎の状態で潰れると、たとえ前方すべりが存在したとしても以下の図のように黄色靭帯は脊柱管内に飛び出してこない。 (この図は上の図を合成して作成したイメージ)。
このように黄色靭帯の肥厚と我々が今まで呼んでいたものは、実態は肥厚ではなく棘間の短縮によって黄色靭帯が正中に押し出されたものである。
この事実は脊椎の外科手術で何をどうすべきか?に結びつく。後方を徐圧しなくとも椎間にスペーサーを入れて後方を広げて固定するだけで狭窄を解除できるということを意味している。逆にこれが脊柱管狭窄が激しい高齢者は前屈姿勢では歩行能力が回復する理由でもある。一般的には前屈姿勢では椎間孔が開くからと考えられているが、黄色靭帯による圧迫が解除されることが最大の理由であるかもしれない。
両側のびまん性症状は腰椎の器質的障害では出ないのが常識か?
すべり症の存在は神経根の左右同時の走行異常を起こす可能性があることがわかった。今回の症例ではL5の神経根症状を生じていなかったが、この症例が左右L5、左右S1の4か所同時に神経根症状を起こしても何の不思議もない。なぜなら、L5のルートも脊柱管の外側に圧排されていた画像が何よりの証拠である。このような走行異常があればそれだけで神経根炎の原因になりうるし、走行距離の長さのせいで張力もアップし、その張力がDRGを損傷させることは普通に考えてありうる。今のこの事実を軽視してはいけない。なぜなら左右L5、左右S1の神経根が4か所同時に障害されると、それはあたかも両下肢に同時に発生したびまん性の知覚障害が起こったように誤解されるからだ。
整形外科では「下肢のびまん性の神経障害は根症状ではない」と、どの教科書にも断言されている。L5の領域とS1の領域の両方が障害された場合、びまん性知覚障害であると100人中100人の医者がそう診断するであろう。おかげで「びまん性知覚障害を来す患者は精神がおかしい、ヒステリーである」というような診断を下し、まともにその患者を診療しなくなるという現象が世界で起こっている。
私はそのように診断され、他の整形外科医に「治療方法はない」と断言された患者を数え切れないほど治療し、完治または軽快させてきた。教科書を信じてはいけない。
この症例で疼痛が出ない理由
疼痛が起こる仕組みとしてごく最近の医学知識では脊髄後角やDRG(後根神経節)の侵害受容器が存在することが注目されている。激しい疼痛にはDRGに炎症が起こり、アロディニアの状態になっている必要がある(新たな疼痛の考え方を知りたい方は「後根神経節の受容体」を参照)。圧迫された場所が痛みの発信源とする異所性発火説は、私は同意しない。さて、前方すべりが9ミリもあり、脊柱管狭窄がこれだけシビアに存在していれば、神経が圧迫を受けると痛みが出るという考え方からすれば、疼痛が起こらない方が不思議なくらいである。
しかし、疼痛の発現機序は単に馬尾が絞扼されるだけでは起こらないことがこの症例からわかる。この事実は椎間板ヘルニアで痛みが出るとは限らないことと密接につながってくる(高齢者では70%に無症状の椎間板ヘルニア持ちがいるというデータがある)。恐らく、高齢者の場合、身長が短縮し神経根の走行がだぶつき、ヘルニアで走行異常が発生しても張力に余裕を持っていられる。そのせいで高齢者にはヘルニアがあってもDRGにテンションが加わらず、疼痛に至らないのだと推測している。
馬尾型なのに神経根型の症状となるのはなぜ?
まず、この症例で狭窄個所以下に走行異常を生じさせているのに、なぜS1だけにしか根症状が出ないのかを考えなければならない。その理由はイラストで示したが、S1のみがもっともシビアな走行異常を来たし、5か所で障害を受けていると予想されるからだ。基本的にL5ルートはL5/Sで脊柱管外に出る運命にある。黄色靭帯で外側に圧拝されても、もともと外側に移動するはずだから走行異常を来たしにくい。S1はあちこちでぐねぐね屈曲させられている。足底に知覚異常が起こっても何の不思議もない。ふくらはぎがだるくなるというIMCが起こっても何の不思議もない。不思議なのは、これほど狭窄されていても、他の神経がほとんど障害されないところにある。これを偶然と考えて思考を停止するのはやめよう。
実際に脊柱管がシビアに狭窄されていて、全く症状がない患者を我々は五万と経験する。それは狭窄が症状の直接原因となっていないことを示唆させる。間接原因として走行異常がある。走行異常のせいでDRGが損傷を起こせば疼痛が出現する。運動神経が選択的に摩擦を受けて炎症すれば筋力低下が起こる。そう考えて辻褄が合わないことはない。
むしろ絞扼部位で原因の全てが起こると考えた方が、圧倒的に理屈に合わなくなる。しかし、過去の整形外科ではその理屈に合わない事実を、何とかつじつまをつけて理屈に合わせようと努力してきた。そして最後に「解明されていない」で終わる。今回の症例で、もし、L5にも症状があったとしたら、整形外科医ならこの腰部脊柱管狭窄症は馬尾型だと間違った答えを出すだろう。
しかし、もう一度言う。馬尾は相当絞扼されても症状が出ない場合が腐るほどたくさん存在する。そして、左右対称に数か所の神経根が損傷を受けることはありうる。脊柱管狭窄症を見方を変えて、馬尾走行異常症とするならば、バラエティーに富んだ神経根症状が、いろんな組み合わせで出現するだろう。そしてそういう思考で臨床現場に戻る。すると今まで解明できなかった症候群が、なんとも簡単に理解できるようになる。そして実際に、今まで治療をあきらめていた馬尾型の脊柱管狭窄症を「治療すれば治る馬尾走行異常症」だと思えるようになる。
事実私は教科書に反し、これまで馬尾型で「治療しても無駄」とされる患者をことごとく治療してきた(「腰・下肢神経痛治療成績」などを参照)。馬尾型→治ります。というよりもほとんどの馬尾型が多発性神経根型であると結論付けてもいい。馬尾走行異常症とはそういう概念である。だから治療すれば治るのだ。
これまでの整形外科の教科書には「多根性神経障害=情動障害、ヒステリー、頭がおかしい」と書いてある。これをいまだに真に受けるのか!ということを各自に問わなければならない。
手術適応の根本的見直しが要求されている
麻痺と直腸膀胱障害が手術適応とされているの整形外科での一般常識である。誰がその基準を作成したのか?わからない。しかし実際、外来で本当にていねいに患者を問診すると、ほとんどの患者は医者に言わない隠し事を持っていることがわかった。それは頻尿である。1日に約8回以上の尿意をもよおすことを尿意頻回という。就眠中は2回以上尿意で目覚めることを頻尿という。患者は自分の尿意が増えていることに気付いているがそれを自ら医者に申告した者はかつて一名もいなかった。しかも頻尿は尿意のからぶりという形で起こりやすいことがわかった。つまり、尿意があってトイレに行くが少量しか出ない、または出ないのである。これは膀胱障害である。
そして私が受け持つ腰痛・下肢痛患者全員に尿の回数について質問するとおよそ80%に頻尿という名の直腸膀胱障害が存在した(「頻尿の原因が腰椎由来であることの実態調査」を参)。しかも、その頻尿エピソードは全員が腰痛疾患が出現したと同時に現れたことを申告しており、腰椎由来であることを強く示唆した。
さらに尿意頻回のエピソードは10代前半の男女でも20代の男女でも同様に出現しており、高齢者に限っていない。直腸膀胱障害を手術適応にするのなら、おそらく腰痛・神経痛人口の8割が手術適応となるだろう。実際は直腸膀胱障害者の数は想像を絶するほど大多数にのぼるが、それを患者からきちんと聞き取りをなされていないために、これを手術適応にするなどというあきれた手術適応基準が作られている。
もしも、手術適応を直腸膀胱障害としたいのなら、それは尿閉や麻痺型の神経因性膀胱と改めて定義しなおす必要がある。付け加えるのなら直腸膀胱障害の診断基準自体があいまいすぎるというしかない。そして私が調査した直腸膀胱障害患者の治療成績は極めて良好で、直腸膀胱障害=馬尾型で難治という発想が間違っているとしかいいようがない。
なぜS2-5に障害が出ないのか?
今回の症例では多少の尿意頻回エピソードがあったが軽度であった。尿意に関してはS2-S4が関係している。つまり、本症例でもわずかにS2-S4の神経根障害があると思われる。しかしながらその直接原因はL4/5レベルの狭窄にあるとは思えない。理由は何度もいうように、本症例での際立った根障害はS1にしか現れていないからである。尿意頻回はあるにはあるが軽度で、これを根症状ととるのはいきすぎだろう。逆に、S2以下に根性症状が軽度しか出ていないことの理由を考えなければならない。断面積が20分の1程度まで狭窄しているのにS2-5に症状が出ない理由を!その考察の参考にするためにS2ルートの走行をイラストで示した。それがこの図である。 この図では赤で示した右S2ルートはまずL4/5レベルで黄色靭帯によって圧迫される。しかし、それは神経をWallar変性させるレベルではないことは今までの話からわかるだろう。
S2-5はS1とは別のルートをとり、正中をそのまま下方に走る(L5レベルの水平断MRIによる)。正中を走るS2-5はL5/S1において椎間関節および黄色靭帯などにより圧迫されることが少ない。よってS1のようにジグザグ走行をしないので強い張力がかからない。よってS2以下に障害が少ないのだと思われる。
ただし、L4/5でのすべりは神経根の走行距離をアップさせてしまうことは予測がつく。走行距離が伸びると神経根への張力が高まるが、この症例で症状が軽度なのは、脊椎の変性で脊柱管の走行距離(身長)自体が縮んでいるからであろう。
つまり、脊椎の変性が進んでいない若年者がすべり症を起こすと、すべり個所以下の神経根障害が発生する可能性が高いと推測される。私はすべり症とS1以下の根性障害を調査したのだが、その結果は見事にすべり症がすべり個所以下の走行異常を発生させることを示唆した結果となった(「腰椎すべり症における合併症調査」参照のこと)。
まとめ
極度の腰部脊柱管狭窄症を示しても症状がほとんどない症例を経験した。このことより脊柱管の狭窄が痛みや知覚異常、筋力低下の直接原因と短絡的に考えることへの警鐘を発した。腰部脊柱管狭窄症の手術適応として画像に頼ることの危険性も考えなければならない。腰部脊柱管狭窄症はそれ自体が症状の原因になっていないことがある。よってこの病名自体に疑問を持つ。狭いだけでは症状は出ない。ならば骨性椎間孔狭窄症、ヘルニア性椎間孔狭窄症、後根神経節炎、脊髄後角炎、走行異常症、などの分類で腰椎疾患を分類すべきであると思われる。
走行異常症はさらに細分化されるべきだ。正中への大きなヘルニアもまた走行異常症の一種であり、ヘルニアが神経への圧迫と考える時代は終わっている(何度もいうように、狭くても圧迫されていても症状は出ないものが腐るほどある)。
走行異常症はすべりによるもの、黄色靭帯によるもの、ヘルニアによるもの、髄節不安定性によるもの、アライメント異常によるものなどがある。それぞれ原因は大きくことなり症状も区別される。
私はこれまでの「腰椎椎間板ヘルニア」「腰部脊柱管狭窄症」というあまりにも単純すぎる二大分類に大きく抗議する!こんな一つ覚えの分類で患者を区別すること自体不謹慎であろう。
また、腰部脊柱管狭窄症は神経根型、馬尾型に大別されるが、両者の境界はないと断言する(明瞭な境界を作っても誰一人まともに診断できない)。多くの整形外科医は左右4か所の神経根症状が出現すれば、これを馬尾型であると間違った診断を下す。そして馬尾型は治らないからという理由で治療を放棄する傾向にある。私はそうやって放棄された患者を多数治療してきた。そしてかなり治せる! 治せることが真の馬尾型腰部脊柱管狭窄症が多くは存在しない証拠だと考えている。
今後、脊椎医学はもう少しまじめに取り組む必要がある(多根性神経障害=頭がおかしい、というようなふまじめな考え方をやめようという意味)。医学全般に言えることだが、我々は教科書から知識を吸収するのではなく、患者から学ばなければならない。
お世話になります。
前回はブロック注射とリバウンドについて、お世話になりました。
前回が治りかけてのことでした。麻痺感も消え、通常通りの生活に戻りました。仕事の忙しさが続いた後です。前回から3か月しか経ってません。
右そけい部辺りに違和感(知らぬ間に消える)→第5腰椎(中心および右)に違和感→腰痛(軽い)→左足に坐骨神経痛(進行が速い)→ふくらはぎあたりまでツッパリ感(側面)→裏腿、ふくらはぎの血管、神経を握りつぶされたような痛み、同時に右足のひざ辺りまで。
まずいと思い、前回の整形外科へ。
ラセーグテスト後、仙骨ブロック注射へ。張った絆創膏を見ると仙骨尖のあたり?でしょうか。
3日間良くならず、少し歩くとダメ。朝方は痛くて寝られなくなる。歩くと間欠跛行らしくなる。座位は○、直立×、後ろへ剃る×、猫背○、カートを押して歩く○などの症状から、一般的な腰痛サイトの所見(素人には見やすいは見やすい)から、「腰部脊柱管狭窄症」では?と考えました。
第5腰椎辺りの右側を押すと、右足の坐骨神経がしびれる箇所があります。
左も右ほどではありませんが、あります。
今日(4日目)に2度目の仙骨ブロック注射を打ちました。同じ場所です。
注射後麻酔が効いていた間は20%減、その後は0~10%減と言ったところです。
(余談ですが、通ってる先生はかなりカジュアルにブロック打ちます。画像なんか見ません。すぐ終わります。ただ、病状は詳しく説明しません。OO症だねとか、一言も言いません。腰痛が単純なものでないことを知っているから??)
現在は右足の痛みが左足を上回っています。
これだけでは判断できないでしょうけど、先生の予想では、腰部脊柱管狭窄症(的な物)と考えられますか?
(前回のレントゲンでは骨に異常なし、炎症が見られるのみ、今回は撮ってません(病院大丈夫か?とも思いましたが 笑)、MRIは無し)。
それと、不思議なのは、腰部脊柱管狭窄症などで、骨やヘルニアが出て神経を圧迫して痛みが出る場合、その骨が引っ込むまで、自然には治らないという事になりますか?
ヘルニア持ちなのに、普段は痛みもなく生活していて、時々腰痛を起こす人がいるので疑問なのです。「常にヘルニアが出てるなら、ずっと痛いはずだ」という疑問です。
まして骨を自然に戻すなんて・・・。
よろしくお願いします。
腰部脊柱管狭窄症は、その原理がすべて解明されているわけではなく、あくまで推測上の理論です。医学のほとんどは推論です。よって正しいと思われていたことが、10年後には間違いであることが判明することが日常茶飯事です。腰部脊柱管狭窄症の原因は血行不良であると推測されています。繰り返しの摩擦で神経が炎症を起こして腫れるせいで、さらに血行不良におちいるという原理です。休むと神経の消費酸素、消費エネルギーが減るので、血液の流れが悪くても血流不十分にはならなくなるので症状が改善します。と、推測されます。
ヘルニアが出ていても症状のない人は、高齢者の7割とも言われており、ヘルニアが痛みの原因になるという理論は、崩れつつあります。その辺の理由は簡単ではないので、私のHPの脊椎学のあたりを読むと理由が書いてあります。ただ、難解ですが。最近、開業準備で忙しく、ていねいに分を返せません。すいません。
開業準備でお忙しい中でのご返答ありがとうございます。
難解な数学の問題が解けたようにすごく気分が楽になります。
再度このブログを熟読して勉強したいと思います(私は素人ですが、誤った知識で苦しむ腰痛持ちの方々に是非読んでほしいと思います。)
先生の書くものは難解どころか解りやすいです(ただ、プロの専門用語は分かりませんので調べなければなりませんが。。)。
開業準備頑張って下さい。
東京に住んでいれば、一番最初の患者になりたいものです(笑)。
お世話様です、
私も脊柱管狭窄症と整形外科医から言われMRIも撮り大分悪い・・よとのことで
現在いろいろな薬を飲んでいますが、改善しません。先生のホームページを教えていただけたらお願いいたします。悩んでいます。
初めてメールさせて頂きます。
先生の驚異的なお仕事ぶりとその成果、また志の高さに大変感銘を受け尊敬致しております。
先生のサイト、膨大かつ網羅的で奥が深く、順番に少しずつ読み進めてやっとここまで辿り着きました。
このページの記事内容とは直接関係しないかも知れませんが、高齢者(限らないでしょうが)の神経組織の器質的変化と臨床症状の不一致は、さんざん言われており、先生の言及も
多岐にわたっている、と理解しておりますが、器質的変化の極致とも言える画像を手にしておりますのでご覧頂ければと思いメール差し上げている次第です。
http://www.ugets.com/20070827-MC01.jpg
http://www.ugets.com/20070827-MC02.jpg
この2枚の脳の画像は、2008年に亡くなった父のものです。
画像は2007年8月の物ですが(86歳時)、この数年前にも別の病院で頭部MRIを撮られて大騒ぎ(大学病院への緊急搬送騒ぎ。でも結局は何事もなし)があり、彼の脳内状況はかなり古くからのものだったと推測しています。
これほど大脳基質が圧迫されていても、父は運動麻痺はもちろん認知症も発症しておりませんでした。
40年ほど前でしたか、頚椎後縦靱帯骨化症の初期の研究論文だったと思いますが、献体屍体から頚髄をスライスして標本にした写真の中に、高度に頚髄が圧迫を受け、断面が確か半分以下になっていたものを見たことがあります。この献体者の生前調査では、頚髄症状らしき症状は無かったと記載され、解説では「緩慢な圧迫」で血流のバイパスで栄養がカバーされているケース、というような記述だったと記憶しています。
冗長になりました。ご存じの知見とは思いましたが、何かのご参考にと思い投稿させて頂きました。
貴重なコメントありがとうございます。画像を拝見させていただきました。驚きを一言で言うと、「人間の体細胞の適応力の凄さと可能性を見た」というところです。慢性に経過した症状であれば、器質的な変化にも十分に耐え、そして日常生活を難なく送る事ができるという事実を再確認しました。それと共に、今後は全ての難治性の症状を、緩慢な経過をたどるようにするための保存療法の開発ができることを確信しました。緩慢にさえすれば、手術を回避できるパターンがいくらでもあり、ならば保存療法は「緩慢な経過にするために行う」という全く新たな治療法の分野が登場します。すでに私の行ってきた保存療法は、まさに「緩慢療法」であったことに気づきました。超高齢化社会を迎えるにあたって、「緩慢療法」の概念は極めて重要かつ、国家レベルで推進しなければならないことだと思います。そのヒントを与えて下さりありがとうございました。
お忙しい中、素早い応答ありがとうございます。
当方の意を斟酌いただき有り難く光栄に存じます。
「緩慢な経過」を、それなりに「安堵」してやり過ごすことができれば、過剰な治療、あるいは過剰治療に陥らずとも済むのでしょう、が、人の業というか性の難儀さは計り知れないもの、のようにも思われます。
先生のサイトの全踏破の後にお便りしたいと考えておりましたが、逸ってしまったようです。
別便でまたご連絡させていただきたく。
初めましてE.Tと申します。
今の現状を何とか打破しようと思い先生のサイトに辿り着きました。
腰部脊柱管狭窄症と6年前に病院にて診断。
*診断結果 L2/3,L3/4,L4/5が特に狭窄しており馬尾型とのことで手術を勧められたが成功確率は五分五分との事で回避しその後徐々に左足に力が入りにくくなり、ふくらはぎの筋肉が右足の三分の二位までになる。
昨年の五月に病院にてMRIを受けたが手術を勧められ又も断念する。
今年に入り特にこのひと月の間に両足(太ももとふくらはぎ)に力がはいらなくなり、両足の踵と甲に麻痺がでている。
又、間歇破こうはないのですが歩く速度が遅くなり、自分の体重が支えられずによろめき特に階段の下りが辛いです。
此のままでは歩けなくなると思い先生のブロック注射が最後の砦だと信じて
診察を受けたいと思いますので、どうか宜しくお願い申し上げます。
ご連絡をお待ちしております。
まずは腱反射を診させていただき、筋力低下が本当に馬尾神経由来なのか?を調べなければなりません。反射が低下していれば馬尾です。お話の内容から察するに、歩行とは無関係に筋力低下・筋委縮が起こっていますので脊柱管狭窄症の典型例ではなく、治療が難航する可能性があります。成功確率が5分5分と言われたのは、典型例ではないからだと思われます。いずれにせよブロック治療を行うことはまず第一にすべきことです。逆に言えば、なぜここに相談する前に近くのペインクリニックでブロックを頻回に受けなかったのか?を知りたいところです。
私はあなたがおっしゃるように、「最後の砦」です。多くの難治性疾患の患者をかかえてパンク寸前ですので本当に最後に来院してほしいという気持ちがあります。ベストを尽くしてもダメだった患者のみが私の診療に来るべきであり、まずはお住まいの近くの他の医師にブロック治療をしっかりと行ってもらっていただきたいと思っています。