私は寝たきりになって車椅子での生活を強いられている人に神経根ブロックを行って歩行可能にした例を何例も経験しています。それほど神経根ブロックは人生を救うことのできる治療です。
私は実際に55歳男性で左下肢麻痺をきたして杖歩行となった患者を1か月に1回の本ブロック治療で18か月かけて完治させた経験があります。下肢麻痺は手術の絶対適応であり、ブロックでは治らないとされていますが、患者は私の意見を信じ、本ブロックを根気よく受け続けました。そして見事に症状が改善され普通に歩行できるようになりました。このような例はおそらく本邦初でしょう。
同様にトイレまで歩けないほどの神経痛の症状を持つ高齢者3名を現在本ブロックで治療中ですが、3名とも一人暮らしの日常生活を送れるまでに改善しました。改善しなければ特別養護老人ホームへ入所していた方々です。3人の平均年齢は90歳です。
神経痛に通常用いる硬膜外ブロックは、90歳以上の変形脊椎には不可能であり、普通はどんな医者も「ご高齢なので仕方ありません」と言って積極的な治療をしません。また神経痛治療に普通に行われている硬膜外ブロックは誤って脊髄麻酔となってしまうことがあり、高齢者では急性循環ショックで命を落とすリスクもあることから、医者は高齢者には積極的に治療しません。
しかし神経根ブロックは急性循環ショックを起こすリスクがないので超高齢者に対しても安心して用いることができます。脊椎が変形していても可能です。
つまり安全に高齢者の神経痛を除去できる唯一の治療法が本ブロックです。養護老人ホームに入所するには莫大な費用がかかり、家族は経済的な負担に苦しめられます。
本ブロックは高齢者に対してもリスクが低く極めて有用ですが、変形した脊椎に本ブロックを行うためには並々ならぬ技術が必要であり、かつ、治療はうつぶせで行うため短時間で行わないと患者が途中でギブアップしてしまいます。さらにブロック手技の痛みが強ければ本末転倒なので治療が成立しません。
私のところへ来院した患者は以前の病院で本ブロックを受けた経験のある方がいますが、その方々は口をそろえて「あんなに痛い注射を我慢できるはずがない」と言っていました。これでは一度受けたらトラウマになって治療を継続できません。
安全に正確に変形脊椎に短い時間で無痛で行える神経根ブロック技術を持つ医師はめったいません。それが本治療が普及しない理由の一つです。
本ブロックは極めて優れた技術を持つ医師が行うと極めて有用性の高い神経痛治療法となります。