ブロック注射の痛さと医師の技術格差

ブロック注射は痛い・怖いは本当か

 私の医院(ペインクリニック整形外科)を訪れる患者が「ブロック注射は痛いんでしょう?」という質問をよくされます。私はいつもこう答えます。

「気絶するほど痛い。二度とやりたくないほど痛い。というのはほぼ真実ですね。」と。「ですが、私のブロック注射を痛いと言った人はいまだかつて一人もいませんよ。」と、これまたおおげさではない真実を伝えます。私が痛くないブロック注射を行うことができる理由は以下の5つのポイントがあります。

ブロック注射が痛いか痛くないかは5つのポイント

  • 運 末梢神経の痛覚受容体に針が触れるか触れないかで痛みの強さが変わります。運がよい場合、太い針で手荒に指しても、受容体を運よく刺激しないことで「ほとんど痛くない」時があります。ですから、医師の技術に関係なく「ブロックが痛くない時」があります。技術の高い医師はこの痛覚受容体を刺激しない技術を持っていると言い換えることができます。
  • 針の太さ 針が太いほど痛覚受容体を刺激する確率が上がりますので細い針を使用するほど痛くないのは当然です。しかしながら安全上の理由(細くて長いと折れてしまう)で60mm以上の長さでもっとも細い針は25Gと決められています。それでも25G針を使う医師は稀です。その理由は、硬膜外ブロックなどでは「抵抗消失法」を用いて注射抵抗が消失したところで液を入れるという方法をとりますが、細い針では抵抗の消失感がわからないという欠点があるからです。細い針で抵抗消失感を得るには洗練された感覚が必要です。よって細い針を使用できる医師はそれだけで高い技術力の証明となります。
  • 局所麻酔 針を刺す前に局所麻酔をすると痛みがやわらぐのですが、実は局所麻酔は技術的にとても難しい注射です。的確な場所に必要最小限の麻酔薬をばらまいて行かなければならず、その感覚は医師が「患者の痛みを我が事のように考えながら治療をしていく」ことでしか得ることができません。一般的な医師は患者の痛みの訴えに「わざと反応しないように」していく傾向にあるため局所麻酔の技術が向上しにくいという現状があります。また、局麻はゆっくり時間をかけないと効いてきません。つまり痛みのない注射をするためには時間的なコストを多大にかけなければならず、それをするとコストパフォーマンスが落ちるという理由でできないことがほとんどです。また、強い痛みを感じる骨膜まで局麻薬を浸透させるにはかなり深く刺さなければなりません。そうしたいくつもある難題を超えて行かなければ局麻の技術は向上しないのでこれを行える医師がほとんどいないという現状があります。
  • 立体感覚 狙った場所(見えない深い場所)に寸分狂わず確実に針を刺して行ける技術は解剖学を熟知し、立体構造を頭に描ける技術が必要です。刺し直しが多いほど痛いブロックになり、出血、組織損傷、感染のリスクを高めます。そこで重要なことはX線で見た2Dの映像を自分の頭で3D(立体)へと変換できる能力であり、この能力が高ければ痛みもミスも少なくできます。しかし、実際のところ脊椎は短縮・変形・ねじれが加わるとX線で見た映像と3Dにしたときの差が大きくなり立体構造を頭の中で描くことが至難の技となります。2D→3D変換技術はそれを教える教科書がないため経験で身につけて行くしか方法がありません。しかし医師は医療現場ではそうした「難しい患者へのブロック」を避ける傾向があるため経験を積む機会を自ら放棄することが多いと言えます。実際、高度変形脊椎へのブロック注射は禁忌とされており、教科書的には「難しい患者にはブロックをしないこと」が決まりになっています。
  • 抵抗認識法 ブロックの常識として骨に針を当て、当たった地点を目安にして目標箇所を推測するという方法をとるように習います。しかし、実際は骨膜に痛覚の受容体があるためこの方法では痛みが強く出ます。これを避けるため最初から目標箇所に照準を定めて刺入する方法があるのですが、この場合、針先が今どこにあるのかを認識するためには注射器の抵抗を感じ取りながら「抵抗で針の位置を知る」という極めて鋭い注射感覚を必要とします。これを抵抗認識法と言います。針先の位置を注射器の抵抗で知るためには特に洗練された技術を要します。一般的な医師が持ちえない高等技術です。

さて、2018年6月に施行された医療法により、クリニックや病院が自分の技術をインターネット上で宣伝することを禁じられることになりました。私は上記のような高い技術を持ちますが、「高い」という言葉を使うことが「優位性を示す」「根拠がない」という理由で違法になります。もちろん「痛くない注射ができます」と記載することも不可能です。この現状においては、もはやインターネット検索で「腕の良い医師」を見つけることは難しいでしょう。

今後の医療不信

 今後、「全国民の医学不信時代」が訪れます。それは西洋医学では治せない病気があまりにも多いことがインターネットを通じて拡散しているからです。医学は科学的に見てまだまだ遅れていると言わざるを得ません。しかし、それが明るみに出ることは国や教授や医師の威信をつぶしてしまうため、国は最後のあがきとしてインターネットの言論統制を行わざるを得ない状況になりました。

 今回はそうした言論統制を皮肉る目的で、わざと自分自身の「痛くない注射の技術」を披露させていただきました。医師の技術には大きな格差があることの一例を示した形です。医師の技術は等しいなどという「国の誇大広告」を信じるべきではないと思います。

 尚このサイトは個人の研究サイトであり、私の経営するクリニックとは関係がなく、クリニック名は一切掲載されていません。あしからず。

ブロック注射の痛さと医師の技術格差」への2件のフィードバック

  1. はじめまして。
    8月の初めに音響外傷と診断された者です。
    ステロイド内服を行い、聴力は正常範囲内にあるとされたものの、右耳の高音の耳鳴りと耳奥の痛み、頭痛と聴覚過敏が続いています。また、鍼治療を右耳の顔周辺に施術後、耳奥から骨が鳴るような音がします。ブロック注射に興味があります。
    宜しくお願い致します。

    • 私の上頚神経節ブロックは痛くありませんので気軽に受けられると思います。

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