優れたコンパートメントブロックの手法
コンパートメントブロックの意味を知らない医師は多いと思います。コンパートメントブロックとは神経ブロックのように直接神経に針を刺すのではなく、神経や血管などがまとまって走行しているトンネル内(筋溝間など)に薬液を注入する方法です。神経実質に針を刺入しないやり方なので治療効果が低いと思われがちですが、実際、臨床の場でブロック経験を重ねますと、コンパートメントブロックの方が通常の神経ブロックよりもメリットが非常に多いことがわかってきます。ここではコンパートメントブロックが優れている点につき解説し、そのコツを示します。
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新手技「傍神経根ブロック」の威力
傍神経根ブロックは透視を用いずブラインドで神経根ブロックを行う新しい技術です。あくまで狙うのは神経根の「傍ら」であり、コンパートメントブロックと言えます。神経根に直接針を刺さない手技ですが、神経根ブロックになることもあり、少し深く刺入すれば交感神経ブロックになることもあります。
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近接治療効果の法則を利用した全く新しい診断法
これは治療学の総論基礎として最重要な法則です。治療を加える場所が病気の原因箇所に近ければ近いほど(的確であればあるほど)、治療効果が高くなるという法則です。当たり前だと思うかもしれませんが、実はこの法則はこれまでの医学にはない新知見ですので改めてここに記します。この法則を決して軽視してはいけません。なぜならこの法則を用いることで多彩な合併症を複合した症状の診断学に応用できるからです。現在の医学には痛みに関してその的確な原因を診断できる診断器械も診断検査も存在しません。痛みには複数の原因が重なっていることが多いからです。複数の原因がどの割合で痛みに関与しているのかを完璧に診断できる手法は現医学には存在しません。よってこれらをできるだけ的確に診断するためには「治療をしてその効果から痛みの出所を推測する」という手法が唯一の診断方法となります。
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硬膜外ブロックの基礎
硬膜外ブロックは種々の痛みに効果があるだけでなく、痺れ、麻痺、冷感、不定愁訴などにも効果があり、しかも姑息的ではなく根治的な効果を発揮する極めて治療意義のあるブロック療法です。しかし、その手技は簡単ではなくコツがいるところから、現在はペイン科と整形外科の医師が主に行い、他の科の医師が容易には行っていない療法です。しかしながら高齢化社会にともない硬膜外ブロックをもっとカジュアルに行い、運動時の疼痛を治療して、高齢者の労働を医療方面から支援する必要性が生まれています。そのために多くの医師が硬膜外ブロックの手技を収得していただくことが急務です。よってここで述べる内容は整形外科・ペイン科だけではなくその他すべての科の先生方に解説するつもりで書いています。
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痛み治療の実践 ~私はこう治療している~
痛みを治療するには各種ブロック注射が非常に有効であることは誰もが知っている。だが、難治性の疾患、慢性の疾患、繰り返し再燃する疾患でのブロック治療は非常に複雑で経験の浅い医師にはまったく未知の世界である。ここでは様々な難治性の神経因性の疼痛を治療してきた実績に基づき、「簡単には治ることのない疾患」のそれぞれで有効な治療法を紹介していく。通常は手術を必要とするレベルの患者をブロック注射のみでどこまで全治させることができるか?が課題である。私はそれを可能にしてきたのでその治療概念から治療方法までを紹介していく。治療側にもっとも必要なことは「治療を決してあきらめないこと」である。よってここでは、通常はあきらめてしまいそうな厳しい症状を持つ患者にどう接していくのかを図解していく。
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ブロック技術を最短で高める方法
ブロック技術はどれほど高くても、狙った箇所が症状の原因になっていなければ効果が少ない。症状の原因が1か所であれば問題はないが、患者の症状はいくつもの疾患が絡み合っている場合が少なくない。ならばブロックを効果的に行うためには、複数の原因を探り出し、その複数に同時に治療していく精神力が必要になる。そうした精神力を養うための考え方を述べる。
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難治性痛みの治療法
なぜ難治性なのか?の真実を追究し、難治性の疼痛を根本的に治療するための指針を述べる。難治性の理由は骨格だけの問題ではなく、患者の日常生活が骨格に対して破壊的な行動を知らず知らずにとり続けていることが原因のことが多い。難治性の痛みを根本的に治療するには単に数回ブロックしただけでは不十分であり、患者の生活様式に合わせて治療に強弱をつけたり、生活指導したり、根気よく回数を重ねたりしなければならない。その具体例を示す。
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ブロック注射と訴訟リスク
患者にブロックを行うことは医師が訴訟リスクを背負うことになります。ひとたび大学から出れば、医師は訴訟リスクに対して丸裸です。多くの医師たちは訴訟リスクを避けるために、リスクの高い患者には手を出さない、同意書を徹底させるなどの方法をとりますが、一流になる医師は訴訟リスクを恐れず果敢に立ち向かい、リスクに自ら首を突っ込んでいきます。そして背水の陣にし、己を鍛えるのです。
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各種ブロック注射後の副作用
どんなブロック注射も針を刺す行為に違いなく、組織の損傷は必ず起こるものである。中には不可逆的で後遺症を残すものもありリスクはゼロではありえない。ブロック件数が増えるほど事故に遭遇する確率も高くなるわけであるから、ブロック治療を行うことがある医師は、ある程度事故を想定していなければならない。ここでは特に、とても軽微な(関節内注射なども含めた)ブロック後の副作用について述べる。なぜなら、軽微な副作用こそ知られておらず、それを無視して重大な事故につながっていく可能性があるからである。小さな副作用を見逃さず、対処することで大きな事故を防ぐことができる。
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ブロックで難病を治していく方法
一流の医師であればこういうことができます。その痛みが腰部の神経根由来であるなら、神経根ブロックで一瞬にして痛みが消え去り、しかも完治に近い状態になるでしょう。完治に近い状態になって、再燃もないのであれば、それはほぼ「内臓由来ではなく、腰神経根由来であることが確定」するでしょう。内臓由来なら、神経根ブロックは一時的にしか効きませんから、区別できるわけです。このように、完治に近い状態にブロック注射で誘導できれば、100%に近い「内臓由来ではない」という確定診断を下せます。しかしながら、まず「わき腹の痛みがどの神経根由来なのか?の同定と、狙った神経根に確実に注射できる高等な技術」がなければ、こうした診断技術は臨床応用できません。
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キシロカインショックと誤解されやすい症例報告
局所麻酔薬として小手術やブロック、抜歯の際に頻繁に用いられるキシロカインには使用時に血圧が急降下してショックを起こす可能性(アナフィラキシーショック)があることはよく知られています。しかしながらキシロカインが直接原因でショックを起こしているのかどうかの真実はわからないものです。なぜならば、採血の注射でさえ恐怖心から血管反射を生じ、血圧が急降下して失神する人が少なくないからです。ところが、キシロカインを局所注射した後に患者が失神した場合、医師はそれをまるでアナフィラキシーショックを起こしたものと誤った診断を下しがちです。医師はその後、局麻薬を禁忌薬としてカルテに銘記し、「キシロカインを今後一切使用しないように」と患者に指導する習慣があります。この「腫れ物に触らず」的な考え方は後にこの患者が局麻薬を使用せざるを得ない状況になった時に大きな不利益となります(例えば抜歯時)。
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ブロック技術を極めるために
ブロック注射は狭義では各種神経ブロックを指すが痛みをブロックするという広義では関節内注射、トリガーポイント注射、腱鞘内注射もまたブロックの一種であると言える。ブロックを行うには神経、血管、腱の走行や関節の位置を立体的にとらえた解剖学的知識を必要とするため、ペイン科か整形外科の医師が行うことが一般的である。しかしながらブロックは彼らの専売特許ではない。ある程度の知識を習得しコツさえつかめばどの科の医師にもできる手技である。特に開業して外来専門ドクターとなった医師には、科の壁を飛び越えて習得していただきたい技術の一つでもある。しかしながらブロック注射は想像以上に奥が深いもので、たやすく習得できるものではない。そこで、本章では初級から上級まで技術を向上させていくためのノウハウを順を追って説明していきたいと思う。
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ブロック適用範囲を広げる技術
通常、硬膜外ブロックは神経痛が原因の除痛目的で行われるが、私は痛みだけでなく、筋力低下・しびれ・間欠性跛行の症状治療にも行う。後に理由は述べるが関節痛・筋肉痛にも神経ブロックを行う。そして過活動性膀胱治療にも用い、正体不明の成長痛にも行い、最終的には予防医学のためにも行っている。硬膜外ブロック以外の神経ブロックを含めれば、私の行う神経ブロックは認知症、パーキンソン症候群、不安定な高血圧、ナルコレプシー、難聴など…現代医学では考えが及ばない疾患にまで適応範囲がある。
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偽性抵抗消失による硬膜外ブロック無効例
我々は硬膜外ブロックをする際に、針先が硬膜外腔(以下外腔と呼ぶ)に達したことを注射器のシリンダーの抵抗が消失したことで知る。しかしながら高齢者の傍脊椎には様々な変性組織が存在し、そこを針先が通過した際に硬膜外腔に類似した抵抗消失を認める場合がある。この偽性抵抗消失によりブロック施行者は「ここが外腔である」と誤認し、黄色靭帯の手前に注射してしまい、硬膜外ブロックが不成功に終わることがある。偽性抵抗消失はどんなにブロックが上達した者でも確実に見抜くすべはない。ここでは偽性抵抗消失による硬膜外ブロック無効例を紹介するとともに、どうすれば偽性抵抗消失を判断できるかについて、そのコツを考える。
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ブロックリスクマネジメント
神経ブロックは痛みを麻痺させるために行うわけではない。血管平滑筋を支配する交感神経をブロックし、標的血管を弛緩させて血流量の増加をはかり、局所の炎症(損傷)→浮腫→炎症性物質の停滞という悪循環を改善させ、損傷組織の修復を促進させることを目的として行うという明確な理由がある。時代の流れとして神経ブロックは根治を期待して行われる治療法であるとの位置づけにされたことは間違いない。この時代の流れこそが神経ブロックが単なる痛みの一時的な抑制ではなく、恒久的な治癒状態へと導く手段であることの証となっていると考えてよい。同様の目的を持つ治療法にステロイドの血管内大量投与などがあるが、その副作用を考えると神経ブロックの方がステロイド投与よりも全身に与えるダメージが少なく、かつ血流増加作用が強力なので、有用性が高い。
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ブロックにおけるドクターズランキング
あなたが一般人であるならば、自分の担当医が以下の何級のレベルに値するかを品定めするといい。あなたが医師であるならば可能な限り上位の級へとトライするといい。ここには細かな技術検定のような項目はない。だが、それぞれの級には診断力、技術力、リスク回避力、強い精神力がなければ到達できない条件をそろえてある。半分以上、冗談で作ったブロック技術ランキングである。
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神経根ブロックと傍神経根ブロックの違い
私は神経根の近傍にX線透視と造影剤を用いずブロックする「傍神経根ブロック」の技術を完成させました。要するにブラインドで神経ブロック針を用いて神経根ブロックを行う手技です。本ブロックは様々な点において神経根ブロックよりも優れています。今後、傍神経根ブロック(PRB)を普及するにあたり、PBRの利点について、従来の神経根ブロックと比較しながら解説していきます。
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硬膜亀裂による予測不能なブロック効果
硬膜外ブロックを行うとその周囲の神経根に緩慢な麻酔効果が現れます。が、硬膜外に注入した液体がどのような経路をたどって麻酔効果を表すかについては全てが解明しているわけではありません。ペインクリニックなどで何千人と硬膜外ブロックを行っていると、その効き方が明らかに他の患者たちと異なる反応を示す者がわずかに存在することに気づきます。その中で今回注目するのは硬膜外ブロックを行っているのに脊髄麻酔になってしまう例です。普通に考えれば深く針を刺し過ぎて、硬膜穿破し、くも膜下ブロックになってしまったと推測されます。しかしながら、
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高齢者の硬膜外ブロック
硬膜外ブロックは種々の痛みを取り除く方法としてペインクリニックでは毎日多数行われています。しかしながら脊椎を専門とする整形外科では高齢者に硬膜外ブロック(以下Epiという)を積極的に行っていません。その理由は、Epiは除痛には優れていますが麻痺や痺れには効果がほとんどないといわれてきた歴史があること。そもそも高齢者の脊椎は変形が激しく、従来のEpiの手技では実行不可能であること。万一タップして脊髄麻酔になってしまった際に高齢者では非常にリスクが高くなること。30分以上かけてなんとかEpiが成功したとしても、それは医師にとってあまりにもコストパフォーマンスが悪く、Epiの度に赤字になってしまうこと。高齢者一人のEpiを成功させる間に、若い人のEpiは数人分行える。つまり高齢者のEpiは普通の人の数倍のコストがかかるのに、保険点数は同じであるところに理不尽さがあります。
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神経ブロック後のリバウンドの病態生理調査
各種神経ブロック後に一時的に疼痛が増してしまういわゆるリバウンド現象はいまだになぜ起こるのかについての原因が全くつかめておらず、我々にとって単に治療後の忌まわしきアクシデントとして扱われている。リバウンドを系統立てて報告された例はほとんどなく、リバウンド現象が医療現場で無視されていること言わざるを得ない。リバウンドが起きた症例を、その後も注意深く観察していくと、その治療前症状と治癒過程において多くの共通点が認められた。それらからリバウンドの病態生理を推測した。するとリバウンドは神経が回復するときの過程としてのアロディニア(異痛症)ではないかと思われた。またリバウンドは痛み単独ではなく、凝り、だるさ、重さ、しびれなどを随伴症状がある者が多く、これらの症状からリバウンドが起こりやすい患者を前もって推測することもある程度可能と思われた。リバウンドが起こしていたさまざまなトラブルを事前に防止できる可能性が高まった。
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注射後の刺入部痛についての考察
採血、穿刺、関節内注射、神経ブロックなど、針を刺した後に刺入部に強い痛みが長期間残ることがあります。ほとんどの場合、刺入部痛が患者と医師の間でトラブルとなることはありませんが、極一部の患者で理解不可能なほどに強い痛みを訴え、社会生活が継続できないほどになる場合があります。その原因の多くは中枢性疼痛過敏(患者側)にあると思われますが、この概念は一般的には認識されておらず、現医学で最近言われるようになった解明途上の概念で、医師の間であまり理解されていません。 誇張された刺入部痛は医学的には大した問題として扱われませんが、実際は臨床的に以下の理由で問題になります。
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MRIでわかる!高齢者のコーダルブロックは難しい
コーダルブロック(仙骨部硬膜外ブロック)は比較的簡単であると認識しているドクターへの忠告である。「高齢者のコーダルブロックは恐ろしく難しい」ことを知っておいた方が無難である。「脊柱管狭窄は仙骨でも起こる」ことを常識としてほしい。仙骨での脊柱管狭窄はコーダルブロックを恐ろしく難しいものにする。通常、腰部MRIは仙骨部まで撮影しないので、このことを認識できる機会は少ない。よってここに掲載するので参考にしてほしい。→
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