マクロファージとターンオーバーと老化
この三つのバランスは1、人の寿命を決め、2、人のストレス強度を決め、3、人の外見の美しさを決めます。進化生物学的には1よりもむしろ、2や3の方がはるかに重要であり、外見の美しさは間違いなく子孫を増やすことに貢献します。1は医学的には重要ですが、進化生物学的には閉経後も長期に生きることはメリットにならず子孫繁栄にあまり貢献しません。2は1にも3にも影響します。 未来の医学は人の体細胞のターンオーバーのコントロールと活性化酸素などの老化原因物質の除去の研究に重きを置きつつ、組織強度を高めることを研究していくことになるでしょう。
さて、マクロファージは細胞のターンオーバーを促し、組織を新しい細胞で満たすために役だっています。しかしながらターンオーバーを繰り返すたびに活性化酸素は体内に蓄積され(仮説)、細胞の複製ミスも蓄積され続けますから、不可逆な老化が進みます。活性化酸素を取り除く画期的な抗酸化療法が編み出されていない現医学においては活性化酸素ができるだけ発生しないようにする方法を考えだし、老化を防ぐことが重要課題となります。
ターンオーバーの回数分、活性化酸素や複製ミスは蓄積しますから、体細胞の過度なターンオーバーを避けていくことが抗老化の要と言えそうです。しかしながらターンオーバーを減らすことは細胞自体の高齢化を促すことと同意ですから、外見の美しさがそこなわれます。 若い世代の女性の肌、赤ん坊の肌はおそらくターンオーバーが早く、そのため皮膚組織は若い細胞で満たされて実際に美しいのですが、ターンオーバーを遅くさせるとしわが多くごつごつした男性の皮膚のようになり、その分皮膚の強度が高くなるでしょう。
ここで重要な概念は死んだ細胞をどう考えるかです。細胞は角化するなどして、明らかにわざと死に、そして組織強度を上げるという手法をとります。細胞的には死ですが、機能的には生きています。生物の細胞はこのように、死を選ぶことで長く生きながらえるということを行っており、単純に細胞の死を死と考えるわけにはいきません。死んだ細胞は細胞適応を起こし、主人の役に立って生き続けます。
生物界の常識として、例えば樹木の樹皮ではターンオーバーを極端に遅くさせ、仮死または死の状態の細胞で表面を分厚く覆います。見た目は老化して艶やかさがなくなりますが、死んだ樹皮が表面をガードすることで何千年と寿命が延びます。死んだ細胞で表面を覆うことは明らかに強度と寿命を延ばします。死んだ細胞のターンオーバーは極めて遅く、ターンオーバーと強度は反比例と思われます。
ここで生物学的に重要なことを述べておきます。「女性の見た目の美しさは、ターンオーバーを速めることで得ており、それは細胞自体のストレス強度を犠牲にしている」ということです。俗な言い方をすると、女性は「筋骨・肌の強度と引き換えに美しさを得ている」となります。逆も真なりで、「男性は筋骨・肌の強度を得るために美しさを犠牲にしてる」ということです。ターンオーバーに影響を及ぼす一つとして自己抗体がありますが、女性の方が自己抗体病にかかりやすいのは、女性はホルモン的に自己抗体が活性化されやすいという土台があるからだと推測されます。強度と見た目は両立できないという究極の選択があります。