ステロイド関節症
ステロイドを主に膝関節に注射している変形性膝関節症の患者に時に関節面の破壊が見られることがあり、これをステロイド関節症といいます。ステロイド関節症の原理は全く解明されておらず、そのため整形外科医に恐れられている疾患であり、整形外科学会では膝にステロイド注射をする医師を蔑視して認めないようにするという風潮があります。ステロイド関節症のメカニズムは「マクロファージによる関節内の死細胞の貧食をステロイドが過剰に抑性してしまうことによる」と私は推測しています。 関節内の死細胞が増えているのに、ステロイドがマクロファージの増援を抑えるので、関節内は死細胞だらけとなり、これが磨き砂のように関節面を傷つけてゆき、関節破壊が急激に進行すると結論付けます。よって、ステロイドで関節炎を抑えるには「限界がある」ことを知る必要があります。必要以上に患者が運動を繰り返し、死細胞を増やしてしまう場合、ステロイドは付け焼刃にしかなりません。この場合は過激な運動を控える方向に指導しなければならないでしょう。死細胞は関節内では細胞適応化し、ムチン様になり粘液として関節内を漂うと思われます。ムチン様になれば細胞の死骸が関節面を傷つけなくて済むからです。これが生体の防御反応です。ムチン化がうまく回転すれば、ステロイドを使用しても問題にならなくなるでしょう。
ここで再度申し上げますが、免疫抑制治療(ステロイド注入など)は適時、適所、適量が重要であり、ステロイドそのものを悪者にすべきではありません。過剰なマクロファージの集積も関節炎を起こしますから、過剰な状態はステロイドで抑えてあげなければなりません。 しかしながら、ステロイド関節症の報告後、ステロイドの適時、適所、適量を研究することさえもタブーとされてしまったため、関節内の免疫抑制治療は20年前でストップしてしまいました。よって現在、ステロイドの適時、適所、適量を研究する学者は皆無、かつ多くの医師がステロイドの使い方について無知です。