予防医学の真実

2017年治療成績

はじめに

病気を未然に防ぐことが予防医学です。各種検診の発達のおかげで病気を初期のうちに加療することが可能となりました。しかしながらいまだに予防医学が未開拓な分野があります。それは痛みとしびれと運動の分野です。おおよそ整形外科の分野の全てが予防医学の未開拓分野と言えます。


運動器分野の予防は高齢化社会にはもっとも必要な課題です。なぜならば高齢者が長く働くことができる状態にならなければ国の経済が破綻してしまうからです。痛くなってしびれて、動けなくなる前に予防医学で悪化させない状態を作り、一生動けるようにメンテナンスし続けることが理想です。しかし、現医学ではその理想にはほど遠いようです。私はこの現状を打開するために神経ブロックを用いた予防医学を提唱します。


予防医学には二つの概念

運動器や感覚器の異常は遺伝的な素因が高いものです。関節の変形は生まれ持った骨格形態が強く影響しますから、普通に暮らしていても変形が進む運命にある人、そしてどれほど激しい運動をしても高齢になっても全く変形しない人が存在します。よって生まれ持った骨格形態から将来の変形や不具合を予想するという予防医学が一つあります。現整形外科学ではこの分野が全く開拓されていません。よって、遺伝的素因と将来起こり得る骨格系の病気を予想して予防する医学研究を私は現在進行形で行っています。が、ここではそれについては触れず、もう一つの予防医学について述べます。もう一つは病初期に治療を開始し、その病気の進行を遅らせるまたは止めるという病初期の予防という概念があります。


病初期の診断学の不備

整形外科学では病気を診断するために様々な徒手テストが開発されています。が、ほとんどの徒手テストは病初期には陰性になるという特徴があります。病初期は痛みもしびれも「あまり強くない」状態ですので負荷をかけてもテストで陽性になりません。


画像診断や血液学的検査では、さらに病初期は所見なしとなるので整形外科領域の疾患は病初期の治療は事実上不可能です。


病気が完成してしまうと徒手テストでも画像診断でも陽性と出ますが、この時期に治療を開始しても遅いのです。骨格や関節に不可逆の変形が起こっているので既に予防医学ではなくなっているからです。


スポーツ選手も予防医学治療ができれば、選手生命もぐんと伸びますが、残念ながら現在のスポーツ整形外科は予防ができるレベルではありません。その理由は診断と治療のジレンマにあります。


診断と治療と予防のジレンマ

痛みなどの症状が出始めた時はどんな検査をしても陽性に出ませんので診断がつけられません。診断がつけられなければ、ブロック治療やステロイド注射などの積極的治療ができませんので病気の進行は止められません。結局診断ができるようになるまで数か月から数年かかり、その頃には病状が進行して保存的治療では不可逆に近い状態となります。よって整形外科では予防医学的診断は不可能です。予防医学では診断がつく前に積極的な治療に踏み切ることが重要ですが、診断がついていないのに積極的に治療が出来ないジレンマがあります。これを打開するためには完治診断が必要になります。


完治診断とは

症状を完治させることでその病気が何であったかを逆算して推測する診断学です。例えば手関節が痛いと訴えている患者を例に挙げます。


手関節が痛い原因として鑑別診断は、関節炎、腱鞘炎、神経根症、TFCCなどいろいろとあります。それに対する完治療法は関節内注射、腱鞘内注射、神経根ブロック、トリガーポイント注射などがあります。このうちどの注射をどこに行った時に完治するかを調べることで原因疾患を逆算します。


病初期は徒手テストでは診断がつかないことが多く、しかも二つの疾患が合併していると徒手テストはお手上げ状態となります。が、完治診断では完治させることができた治療の組み合わせで原因疾患が推測できるわけです。しかも予防医学となっています。


完治診断の弱点

完治診断ではブロック注射などの各種注射がノーミスであることが条件となります。医者が注射ミスをしているから効かなかったという結果では診断になりません。よって、完治診断をするためには、それを行う医師がこれまでに数多くのブロック注射を経験し、ほとんどノーミスで狙った箇所に適量の薬剤を注入できる技術を持っていることが絶対条件になります。


実際のところ、腱鞘内注射や手指の関節内注射などは、狙った箇所に薬剤を入れるのが非常に難しく、完治診断ができる医師はほとんどいないのが現状です。簡単そうに見える注射程難しいものです。


完治診断の無知

完治診断が可能であることを認識できている識者はほとんどいません。私はすでにあらゆるブロックを多数駆使して、完治に導き、その時の治療の組み合わせから原因疾患を割り出すということができるようになっています。しかし、これを基礎医学者に話すと、「痛みは末梢から脳までの間、どこをブロックしてもとれますよ。先生がハンサムなだけでも痛みは消えることもありますし、痛みを除去したことで原因を割り出すなんてことはできませんよ」と嘲笑されたのを覚えています。


臨床を知らない学者はこのような考えが正しいと信じているので、完治診断ができることを知りません。


確かに、痛みは末梢から脳までのどこ痛覚伝道系をブロックしても多少はとれます。しかし、原因箇所と異なるところをブロックしてもそれは一時的に痛覚信号が遮断されているだけで、原因箇所で炎症が治まっていないので、ブロックの薬効時間が過ぎればすぐに痛みが再発します。こうした当然の原理を知らない学識者が多いのかもしれません。


基礎医学者はブロックの真の意味を知らないようです。ブロックは痛覚を遮断するために行うのではなく、局所の血流を増加させて損傷部位の細胞のターンオーバーを促進させて、新しい細胞に置き換えて修復させることが目的です。よって原因箇所以外をブロックしても意味がありません。完治に導くには的確に原因箇所に治療をヒットさせなければなりません。しかし、そうしたことに無知なのは、その基礎医学者だけではなく、臨床医も完治診断を知らないように思えます。なぜなら、実際に完治させることのできる医師が少なく、完治診断を自分の経験として収得できないからです。


完治診断の例

48歳 男性 2か月前より右手の痺れをと痛みを訴える。他医で頸椎のMRIを撮影され、異常所見なしと言われている。Spurling test(±)、Phalen test(-)、Tinel sign(-)、頸椎単純XPでC5/6に骨棘あり。この所見からこの患者の病名を判断せよ。


このような症例は手の痺れと痛みを訴える患者の半数以上を占めるのが実際の臨床現場です。つまり、症状があっても現医学で診断をつけられない症例が半数以上というのが現実です。手の痺れと痛みを来す疾患は確率で言えばこの時点で1、頚椎症性神経根症、2、手根管症候群、3、末梢神経炎、の可能性が高いでしょう。しかしPhalen、Tinel、共に陰性であり、神経伝道速度を調べたところで恐らく有意な所見は得られないでしょう。


この時点で整形外科医には治療がお手上げとなります。診断名はついていない状態ですから、頸椎に物療を行い、Vit.B12やNSAIDを処方することぐらいしか治療方法がありません。しかしこれは治療ではありません。なぜなら、そういう治療は既にこの症例の患者は前医で受けていて、それで治っていないからです。


本症例の完治診断の実際

私は本症例ではXP所見とSpurling test(±)の所見からC6の神経根症を第1に疑いました。そこでC6に傍神経根ブロックを行いました。しかしその翌週、患者は「全く症状が改善しない」と申告。そこで今度はC6とC7に傍神経根ブロックを行いました。すると「少しは効いた気がする」というあいまいな返事でした。私は自分が行う傍神経根ブロックにミスがないことを認識していますので、「効いた気がする=効いていない=神経根症を否定」とこの時点で除外診断を下すのです。


これは完治診断の逆バージョンであり、治らないのであれば原因は他にありと考えます。そこで2、の手根管症候群を次に疑うのですが、Phalen、Tinel、共に陰性であり、徒手テストでは手根管症候群ではないという診断がついています。つまり徒手テストでは手根管症候群が除外されているわけですから、神経伝道速度を検査するわけにはいきません。さあどうしますか?


私は患者に事情を説明し、手根管内注射を受けてもらうことにしました。その結果、注射を行った瞬間から痺れと痛みは完全に消失しました。その次の週に話を伺うと痺れも痛みも3分の1以下に低下したとのこと。よって手根管症候群と断定し、今度はケナコルト入りの局所麻酔剤を手根管内に注射→完治へと導きました。こうして手根管症候群という確定診断に至りました。


完治診断の考察

画像診断、徒手テスト、神経伝道速度(実施していないが)などは、どれも初期の症状では偽陰性を示します。つまり現在の医学では確定診断が不可能です。しかしながらブロックを駆使し、完治させることで確定診断をつけることができ、予防医学を同時に進めることができます。基礎医学者が述べたように「どこにブロックしても痛みは消える」というようなお伽話はありません。臨床医学はそれほど甘いものではありません。原因箇所に治療がヒットして初めて完治へと導くことができます。


しかしながら、私のような完治診断は、普通の医師には実行不可能です。私は最初に傍神経根ブロックを行っていますが、診断がついていない段階で、リスクが高く侵襲性のある治療を「試しに行う」ことは無理です。2度目のブロックで患者は激怒するでしょう。では、私がなぜ試しに傍神経根ブロックを2度行えたのでしょう?その理由は私のブロック技術は安全性が高く、注射時の痛みがほとんどないからなのです。そしてもちろん、手根管内に行うブロックも安全性が高く、注射時の痛みがほとんどないから試しに行うことができるのです。


予防医学という初期症状の段階では侵襲性の高い治療は御法度です。よって私のような治療が可能なのは1安全かつ2痛くなくかつ3狙った箇所にブロックできるという3拍子が揃う必要があります。この3拍子を揃えられるように日頃から訓練をしていれば完治診断が可能になるのです。


完治が可能であることを誰も認識していない

予防医学は病状が初期の時点で完治に導き、症状が出ないようにすることが目的です。病状が酷くなる前にそれらを抑止できれば、健康な状態のまま継続して生きていけます。しかし、こうした予防医学を広めるには二つの大きな壁があります。その一つ。

  1. 患者は注射により完治することを知らないこと
  2. 症状を改善させると加齢変化が止まることを医師も患者も知らないこと

この二つを広めない限り予防医学は普及しません。しかし完治とは何か?の概念が個人個人で異なるので問題があります。完全に症状が出ないという状態は、生き物には存在しません。どんな超人でも強い外力をかければ必ず損傷します。組織が弱くなっても損傷します。治しても再発させます。再発したことを「完治していない」と受け取ることは正しくありません。治しても再発させたのは患者なのですから。この辺の問題は複雑なので、医学レベルで完治の概念を定義する必要があるでしょう。完治の定義を詳しく知りたい方は「日常損傷病学」をお読みください。私は便宜上(論文で治療成績をデータ化する上で)、「完治とは治療を行わなくても症状がほとんどない状態が4週間以上続く」としています。


さて、患者の多くは「注射は癖になる」という俗説を信じています。癖になる=症状の軽快と増悪を繰り返す、ことですから「注射で完治しない」ことを意味します。つまり世間の俗説では注射で完治しないという噂が広がっています。「注射で完治に導ける」ことを患者が知らないのなら罪はありませんが、実際は医師が知りません。


私はあらゆる関節に注射を行いますが、特に股関節、足関節、手関節、指関節などは驚くほど完治率が高く、一度の注射でも治ってしまう場合が少なくありません。よって注射が癖になるなどということはありません。


こうした「癖になる」俗説は、ほとんどの整形外科医がヒアルロン酸のみを用いた関節内注射をすることが原因の一つになっています。ヒアルロン酸は関節の修復にあまり寄与しません(「変形性膝関節症へのヒアルロン酸注射の効果調査」を参考ください)。よって完治に導くことができません→軽快と増悪を繰り返す→注射が癖になる、となります。


ただし完治に導くための注射方法は簡単ではありません。上記の症例でもわかるように、現医学で診断がつかないものを完治で診断に導くわけですから、あらゆる可能性を考える頭脳と、あらゆるブロックを打つことができる技術、そしてあらゆる面倒なことに首を突っ込む精神力が要求されます。完治に導くためには医学書の知識はほとんど無力です。可能性を試す精神力が必要で、技術力はその後からついてきます。


痛みを治せば加齢変形が止まる

症状を改善させると関節変形が止まることを知っている整形外科医はおそらく一人としていないでしょう。つまり、症状を軽快させると関節が加齢変化を起こしません。


人間のからだは高齢であっても新生児であっても、細胞自体は数か月以内の新しいもので構成されています。よって高齢化に伴う変形とは、組織内に処理できないゴミが蓄積されていくことを意味します。よってゴミをため込まなければ、組織は何歳になっても健全でいられます。


ゴミをためない方法は「痛みを来させない」または「痛みが来たらすぐに改善させる」ことです。この「ゴミをためない方法」は私が臨床医師を長年やってはじめて理解できたことであり、普通に医師をやっていたのでは気づくことはまずないでしょう。「痛みを来ないように治療していれば老化しない」と宣言しているようなものですから、一般的には受け入れがたい理論です。


しかしながら、私はこの「痛みを来ないように治療していれば老化しない(しにくい)」という理論を膝関節の治療で証明しました(「膝関節の消耗と経年変化を止める新治療法」を参)。おそらく世界初の理論であり臨床医はこのことをまだ誰も知らないでしょう。


すなわち、痛み症状を未然に防いでいけば関節変形や経年変化がほとんど起こらないという結論に達したわけです。これが現代社会に予防医学が必要な理由です。


おそらく痛みの期間と経年変化は相関関係があり、長期間痛みを辛抱しているとその間に経年変化が進行すると思われます。ならば痛みが初期のうちにできるだけすみやかに痛みを完治させる必要があります。


この際「痛み止め」は治療ではありません。痛みの原因場所を特定し、その場所の血行障害を改善させてはじめて治療になります。よって経口鎮痛薬は治療になるどころか、痛みをごまかすことで「痛み期間」を延ばすことになり、経年変化を促進させるでしょう。経年変化を予防するためには局所の血管を拡張させるために、表面麻酔剤の注射(ブロック)が必要です。


この概念を広めない限り、運動器領域の予防医学は前に進みません。スポーツ外傷も同様です。選手生命を長引かせたいのであれば、痛みが初期のうちにブロック治療が必須ということです。


しかし、これらがなかなか広まらない理由は、前にも述べたように、予防医学を行うためのブロック技術は、かなり訓練を積んでいなければ不可能であるところにあります。


治療なのか姑息療法なのかを見極める

治療と姑息療法の違いは、姑息療法はあくまで症状のみを減じさせ「自然治癒」を待つだけのこと。これに対して治療とは原因箇所に手を加えて「自然治癒力」を高めることです。傾向治療薬の多くは症状を減らしているだけであり、姑息療法です。これに対してブロックは原因箇所の血行を改善させるという明確な治療目的があります。予防医学を推進するためには「治療」ができなければなりません。


予防医学の限界

話が元に戻るのですが、病初期に「根本治療」を行うためには、原因箇所をつきとめなければなりません。しかし、病初期では原因箇所がわからないばかりか、どんな検査にもひっかかりません。よって原因がわからないのでブロックをするにもどこにブロックをしたらよいのかが不明なので、病初期に根本治療をすることは普通の医師には不可能なのです。これを可能にするのが完治診断です。


再度申し上げますが、完治診断技術を得るにはブロックを 安全に、痛くなく、ミスがない、という3拍子が揃わなければなりません。原因と思われる箇所にしらみつぶしにブロックができなければならないからです。予防医学を推進するということはそうした技術を持つ医師を育てることに等しいわけです。私にそれができるとは思えませんが、前に進む以外に道はないでしょう。

高齢者大脳能力開発治療紹介

2017年治療成績

はじめに

高齢になると脳の血管が劣化すると共に脳への血流量が低下し、それに伴い記憶力・思考力・創造力・気力・意欲などが低下します。この状態を神経ブロックを用いて改善させる治療法を紹介します。

治療の原理

脳底動脈や脳幹への動脈を支配している交感神経節(上頚神経節)を表面麻酔剤でブロックし、血管平滑筋を弛緩させて血流量を増やします。魔法でも奇蹟でもなく一定時間血管を拡張させるだけの治療です。現存する脳治療の中でもっとも効果が高くリスクの少ない治療法です。

治療回数

通常1週間に1回しか行いませんので1回の注射の効果は2~3日しか現れませんが、これを重ねることで徐々に脳のシナプスは回復していくと思われます。

副作用

血管を拡張させるので抗凝固薬ワーファリンなどを服薬していると微小な脳出血のリスクが高まると思われますので本治療は行いません。バファリンなどの抗血栓であれば問題がないと思われます。局所麻酔剤にアレルギーのある方は行えません。局麻中毒の症状として注射後数十分間、めまい、悪心、悪寒などが起こることがまれにあります。

効果(実例)

思考力・創造力などを具体的数値で表せませんので、実際にこの治療を行っている方の実例を掲載します。


79歳女性

主訴:月に2~3回失神する 普段でもふらつく(→詳しくはブログ「血圧不安定による失神発作予防に上頚神経節ブロック」) 経過:現在毎週1回上頚神経節ブロックを行う

治療の成果

「ブロック後は3日間、意欲・字を読む能力・接客能力・しゃべる能力が間違いなく上がると言う。先週は水曜日に大勢のお客さんが家に来たが、ブロックのおかげで家事や接客をこなすことができて本当に助かりましたと話してくれた。食欲も完全に回復(以前は1か月間食欲不振で1日におにぎり1個も食べられなかったがそれも改善した)。」


62歳女性

主訴:両耳鳴り(年中大音量のせみの声が24時間なり続けている×6年) 既往歴:下垂体腫瘍で手術を2度行っている。 経過:毎週1回上頚神経節ブロックを行い、すでに40回以上治療を行った。耳鳴りは両耳とも半分程度の音量になったが、まだ鳴りやまない。しかし1日のうち数十分、耳鳴りが鳴りやむようになった。

治療の成果

「ブロック治療後に物事に対する意欲が桁違いに増進したと話してくれた。孫の未編集ビデオが何十本と放置されていたが、パソコンを用いてそれらを全て編集できたとのこと。編集できたのは偶然ではなく、このブロックの効果であると彼女は断言してくれた。耳鳴りが治ってきたのも奇蹟です。」


75歳女性

脳梗塞後遺症で右片麻痺 ブロック9回目で大根の千切りが可能となる(「最新医学トピックス」>「脳梗塞後遺症に革命的な新治療法」参)

治療成果

すでに後遺症として完全に固まっていた右手の巧緻性がブロックで向上したのは偶然ではないでしょう。


信じていただかなくても構いません

本ブロックは脳の血流量を増やすだけの治療であり、特別難しい原理は何一つございません。今後、脳の機能が改善した例、せっかく治療しても改善しなかった例も掲載していきます。私は医師であり自然科学者であり、治療成果を誇張していませんが、世間一般的には信じがたい話でしょうから、無理に信じていただかなくて構いません。興味のある方のみご一報ください。本ブロックを商売にして儲けようとは考えておりません。なるべく多くの医師に治療法を伝授し、高齢化社会を救うことが私の目的です。本治療は病気でない方にも適応できるのでご紹介差し上げました。

 

線維筋痛症の定義

2017年治療成績

線維筋痛症の定義はないに等しい

病名には定義があるのが当たり前と思われていますが、定義が事実上ない病名が多く存在します。その理由は

  1. 定義が各国、各学会、各年度で異なる。例:慢性関節リウマチ
  2. 病名を定義したはずだがそれが不適切→解釈が変わり続ける。例:線維筋痛症
  3. もともと病名ではなく症状を病名にした。例:腰痛症

 

これらの病名には定義があるように見えて実際はありません。定義がない病名は毎年新しい説で定義らしきものが変化していきますので病名が信用度の低いものとなります。が、定義づけした世界の著名な教授先生たちは自分の名誉にかけて、推論や仮説で病態生理を証明しようとします。そこには真実からかけ離れた矛盾が生じるので医学の最新理論には嘘が発生するという仕組みがあります。科学というものは常に仮説から生まれるため、新説に嘘が発生してしまうことは避け難いものなのです。


学説の中には常に嘘と真実が混在し、矛盾があり、全ての理論が一つにつながることはありません。よって各自が自分に都合のいい学説を信じ、その信念を元に患者を治療するので混乱が発生するという仕組みがあります。


その中で線維筋痛症は現代医学の中でもっとも混乱している病名であると言えます。混乱している病名は医学の中で主流になることはなく、亜流として放置されることがしきたりであり、そのため医学の典型的な教科書には掲載されることはなく、国家試験にも亜流の医学は採用されません。


よって線維筋痛症はその病態生理が解明されているかのようにアメリカ合衆国では紹介されていますが、一般的な医師には信用されておらず、米国線維筋痛症学会での研究論文は日本には普及していません。日本に普及しない理由は線維筋痛症が亜流であり、信用度が低いからであり、日本人が勉強不足だからではないのです。


逆に線維筋痛症をシステマチックに説明しようとすればするほど、その医師は異端児的に見られてしまうのが現状です。ただし、新説には無限の可能性があります。患者はその可能性を求め、治療実績のある医師の元を訪れ診療してもらえばよいことです(ただし、実績にはマスコミが作り上げた嘘が存在します)。


線維筋痛症はドル箱

痛みのシステムがまだまだ現医学では解明に至っていませんから、研究を進めれば進めるほど仮説・推測で理論を構築していかなければなりませんのでますます医学の本流から孤立していきます。しかしながらそこはまたドル箱であり、商業主義に走りたい医療従事者の蜜の山です。医療従事者には医師以外にカイロプラクター、鍼灸師、柔整師、インストラクター、トレーナー、薬剤師など多くの医師免許を持たない者たちが集まってきますから仮説・推論はますます勝手な都合で膨らみあがり、事実と推測の区別がつかなくなります。


こうした理由から線維筋痛症自体が本流の医師たちに支持されないのです。本流の医師たちが治せない線維筋痛症は、治せないからこそ隙間産業となり、そこには多くの企業がひしめきあって利益を吸い取りにやってきます。肩こりや腰痛を商売道具にすれば莫大な利益をもたらすことはみなさんも承知でしょう。街を歩けばどれほど多くのマッサージ店、カイロプラクティック、接骨院があるか…。そこには線維筋痛症が治るという夢がうずまき誇大広告が氾濫しています。


もちろん、そうした誇大広告や推測のおかげで疼痛システムが年々解明されていきます。しかし、それらは知識の断片でしかなく、線維筋痛症を根治させる理論にまで結びついていません。よって断片的知識は本流の医師たちに無視されています。


線維筋痛症を研究することは現時点では商業主義と結びついた亜流であり信用性が低いという立場にあります。結局、線維筋痛症を研究する者と普通の臨床医はなじりあいになる傾向があり、患者と医師もなじりあいになる傾向があります。なぜなら患者にとっては自殺を考えるほど苦しい病気であるのに、医師がそれを認めない、治せないからです。


私はまじめに線維筋痛症を研究し、治療実績を持つ医師ですが、この私でさえ「痛みを研究していると自負している学者たち」から理論的な攻撃を受けています。彼らは自分たちの理論や定義が正しいと信じて疑っていません。新説にはそもそも嘘だらけだというのに…定義に嘘があることに思考が及ばないようです。


治せることが全てに優先される

しかし、医療にとって信用が全てではありません。新しい分野を開拓する際は常に信用性は低いものです。患者にとって重要なことは、病名や信用ではなく、治るか治らないかです。線維筋痛症は現医学で治せないからこそ医師に信用を得られておらず、治せないからこそ商業主義者が集まってよってたかって研究されているという現状を知りましょう。簡単に治せるのならいがみあうこともありません。また、いがみあい意地になった医師は「100%断言できる」などという非科学者的な言い方をしたりするもので、これがさらに信頼性を損ないます。


線維筋痛症の真実を追究したいのであれば、まずこのことを認識しておくべきです。理論で押し問答しても治さなければ意味がないということです。線維筋痛症学会は診断基準を作成して定義を実体化させようとしていますが、あまり意味がありません。診断したとしても線維筋痛症用の特殊な治療法があるわけではないからです。


線維筋痛症はおおよそ神経痛

線維筋痛症はいまや「中枢感作によって起こる」と言われており、そのシステムは脊髄や脳幹、視床下部、大脳に至るまでの疼痛の錯誤(過敏)によると考えられるようになっています。しかし、患者に生じている中枢感作を画像や採血で証明することは現医学では不可能です。さらになぜ中枢感作が起こるのかについても解明されるに至っていません。まだまだ謎だらけです。


私は中枢感作が起こる原因は、脊髄や神経根が、下方に引っ張られることで、神経根、脊髄、延髄、脳幹などに微小な損傷が起こり(または血行不良が起こり)炎症が起こることを想定して治療しています。これを脊髄・脊椎不適合症候群と名付けました。これは脊椎が前屈する際に脊髄が尾側に引っ張られて生じる神経損傷であり、上方は視床下部付近まで牽引ストレスが及びます。この概念は現医学に全く欠落しています。よって中枢感作の本態は脊髄の強い張力による炎症であると私は確信していますが、「中枢感作は炎症ではない」と私に抗議する者が存在し困惑しています。中枢感作は「脊髄が物理的に引っ張られて起こる」という概念が欠落している者から、こうした抗議をいただくわけで、彼らに説明しても無駄だと悟りました(現医学は脊髄の緊張による病気の概念が欠落しています)。彼らは持論に凝り固まっています。そして意地になっていることを知りました。


もちろん、中枢感作が炎症ではなくシステムであると言いたい彼らの気持ちはわかります。ですが、中枢感作は未だ全貌が解明されていないということを真摯に受取れば「中枢感作は炎症ではない」と断言することは真実を歪めます。人の体の不具合は炎症とそれを伝える信号で表現され、中枢感作も炎症がベースとなって起こっているにすぎません。「ここからは炎症でここからが感作システム」と切り離すことができません。一連なのですから。


米国線維筋痛症学会の迷走

まず、多くの臨床医は線維筋痛症を信じていません。中枢感作を理解している医師もほとんどいません。それだけでなく中枢感作の定義自体も迷走していることは前述しました。


臨床医が不信に思っている病名は他にも疼痛関連病に多く存在します。リウマチ筋痛症、線維筋痛症、筋・筋膜性腰痛症などです。これらは病名と病態が一致していません。病名には病因が記されているのが普通です。


例えばリウマチ筋痛症では自己免疫系による炎症が痛みの原因と考えられ、線維筋痛症では筋線維や結合組織の炎症が痛みの原因と考えられ、筋・筋膜性腰痛は筋肉と筋膜の炎症が痛みの原因と考えられて、最初に病名がつけられたという歴史があります。


しかし、それら当初の病因は誤りであり、これらは全て同じ中枢感作(末梢ではなく中枢が痛みを作りだし、痛み過敏状態にしている)の状態を表していると推論されるようになってきました。つまり当初名付けた病名自体が誤りであるわけですが、誤りを改正せず、病気の定義を変えてつじつまが合うようにしてきたという不誠実があります。


現在、米国線維筋痛症学会では中枢で起こる刺激伝道系の錯誤システムの全てを「中枢感作」で表現しようと動き始めました。この動きは私個人としては歓迎すべきではありますが無理があります。なぜなら中枢感作は人間の全ての臓器の活動、炎症、新生、成長に関わるので生理痛や下痢から眼精疲労に至るまで、ほぼ全ての症状に関与するからです。つまり線維筋痛症学会は人間における全ての科の病態に口を挟もうとしているわけです。それは間違いではありませんが、当初の線維筋痛という言葉の意味からかけ離れ、現医学では解明しきれないシステムの渦にはまり込んでいっているように思えてなりません。守備範囲が広すぎるのでまとまりがつかなくなります。


線維筋痛症患者の苦悩と怒り

線維筋痛症にはさらなる大きな問題があります。それは患者自身です。私は重度の線維筋痛症の患者を現在も必死に治療していますが、彼らの日常生活における苦痛は想像を絶するほど苦しいものです。実際に、あまりに苦しくて自殺した患者もいます。めまい、耳鳴り、吐き気、失神、不眠、悪寒、戦慄、舌の感覚異常、異味症、呼吸困難、眼精疲労、頭痛、三叉神経痛、呂律が回らない、嚥下困難、発汗異常、顔面紅潮、上下肢の痛み・しびれ・だるさ、腰痛、背部痛などが起こります。私はこれらの症状を多数の神経ブロックを組み合わせて治療しますが、普通の医師にはそういう治療が不可能です。保険制度が許していませんし、種々のブロックが不可能です。よって患者を即座に見放し精神科へと廻します。


その理由は上に挙げた症状です。これだけの症状が一度に合わされば、医師は全くのお手上げ状態ですし、精神が崩壊していると誤解するのも無理はないでしょう。普通の医師には上記のような症状に対応できません。よってこれらの不定愁訴がある患者は苦痛と戦いながらいろいろな医師を渡り歩き、そして最終的に医師たちにおおいなる不信と怒りを持つようになります。それはそうでしょう、自殺を考えるほどつらい症状なのに、「精神異常」のように扱われ、まともに診察してもらえず、薬漬けにされるからです。しかし、患者は全財産をはたいてでも治りたいわけですから、ドル箱として利用されます。


線維筋痛症患者は日本の医師に不信

さて、アメリカ合衆国の線維筋痛症学会ではこうした症状がなぜ起こるのかについて研究しているのですが、前述したように、この学会が発表する論文は内容が漸進的かつ推論が多すぎて臨床現場に応用するには確証がありません。しかしながら彼らは患者を精神病患者扱いすることはありませんので、患者は自尊心を守るために、線維筋痛症学会の理論が正論であり、彼らの理論を学ばない医師たちは医者として不適格であるとみなすようになります。「アメリカでは研究が進んでいるのに日本では精神異常者扱いする」と怒りをあらわにし、日本の臨床医を誹謗中傷するという現象が起こります。これがさらに日本の臨床医の怒りを買い、医師と患者が互いに不信感を持つようになっています。


確かに日本では線維筋痛症=精神異常、と扱う不届きな医師が多いことは認めます。ですが、線維筋痛症を治せないのは米国も日本も大差ありません。上記のような、信じがたい数の症状を訴える患者を治せる医師がいますか? 私はその症状の一つ一つに神経ブロックを行い治療していますが、相当な精神力を使います。


患者は苦悩し勉強する

患者たちはまた、どうして痛いのか?の理由を探し、痛みに関する書物を読み漁り、医師以上に疼痛の知識をお持ちであることも知っています(ただし、定義がしっかりしていない理論を絶対視するという偏見の原因になっています)。それらの知識を医師に向けて攻撃する材料にしています。


一度、線維筋痛症をwiki で検索してみてください。すると、診断できない、治療できない、あらゆる苦痛をまとめて捨てたゴミ箱のようになっていることがすぐにわかります。症状の項目は何十行にも渡り、診断基準も症状ばかりの羅列、そして合併症なのか主症状なのか理解不能な膠原病関連病との混合、そしてそれらを治療できるかのように期待を持たせる疼痛の新薬の名前の羅列。


しかし、気づいてください。そこには根本的な治療法が全く掲載されていないことを。そして原因がはっきりしていないことを。いろんな病態生理が言われ研究もされていますが、それらは断片的でつながっていないことを。なに一つまとまっていないことを。治療する科が一定していないことを。


線維筋痛症学会を過信することなかれ

線維筋痛症は原因が特定できない症状をまとめてそう呼んでいるという状態です。この病名は病態を表しておらず、原因も表していません。つまり実体がありません。実体がなく、枝葉の現症ばかりを研究している線維筋痛症学会を過信すべきではありませんし、線維筋痛症学会での研究が「絶対に正しい」と思わない方が賢明です。日本人はアメリカ合衆国での論文は正しいと思い込む癖がついているようですが、それは真実ではありません。アメリカ人が作った疼痛関連の言葉の定義も的外れなものが多いと感じます。例えば、中枢感作の中枢とはどこを指すのか定義されていません。中枢感作は炎症ではないと定義している者がいますが脊髄が引っ張られて生じる中枢感作の思考が欠落していることなどです。


霧の実態をつかむ

私は線維筋痛症の原因を「脊髄・脊椎不適合症候群」であるとすでに断定しています。脊髄に過度な緊張がかかることで、神経根、脊髄後角、延髄、脳幹、視床などが損傷し、中枢感作が複数個所に起こる病態であると推定して根本治療を行っています(高齢者の線維筋痛症の多くは中枢神経への栄養血管が詰まって起こると推測しています)。


損傷した神経系に強い炎症反応が起こるかどうか、または起こりやすさは、本人の自己免疫の状態が関係しています。自己抗体が活発で細胞のターンオーバーが早い状況では強い炎症反応が起こりやすく、中枢感作が起こりやすいでしょう。リウマチ筋痛症はそうした意味合いからつけられた病名であると推測します。これが線維筋痛症がリウマチ科で診療されている一つの理由です。


私の仮説が正しいかどうかは関知しません。その他の病態があるかどうかも関知しません。線維筋痛症は病態が不明なものをそのようなネーミングで読んでいるわけですから、病態がはっきりすればそれは線維筋痛症という名前ではいられません。例えば「脊髄・脊椎不適合症候群」という新たな名前に変わります。ですから、どちらにしても私は線維筋痛症という霧を治療するつもりは全くありません。線維筋痛症の存在を私は認めません。なぜなら、線維筋痛症と診断がつけられた患者を神経根ブロックで完治させた場合、病名は神経根症であって、線維筋痛症というネーミングはそもそも間違っているのですから。


私は肩こりなどの線維筋痛症様の症状を呈する方々を頸部神経根ブロックでことごとく完治させていますが、ならばこれらは線維筋痛症ではなく頸椎神経根症です。治してしまえば線維筋痛症という病名は消えます。線維筋痛症の定義はそれほどあいまいです。患者にとって重要なことは理論ではなく治せるか治せないかそこだけです。治せる医師の意見を尊重してくださいとしか言えません。


線維筋痛症の治療と戦い

私は現在3名の重症な線維筋痛症様の患者を治療しています。全員が女性です。3名を線維筋痛症としてではなく「脊髄・脊椎不適合諸侯群」として脊髄や神経根、交感神経節にブロック注射を徹底的に行うことで治療しています。軽症の患者は既に治していますので、この3名がいまだに治らず悪戦苦闘しています。


3名とも、他の病院で診療を拒否された治療難民です。20~30の病院を巡っても、まともに治療されてこなかった強者ぞろいです(ペイン科に通院しても効果なしだった患者ばかりです)。


これらの患者には毎回7~8か所に徹底的に神経ブロックを行います。そして彼女たちはブロックの効果が切れてくると再び来院してブロックを懇願します。いまだ完治に導くことができていないので、線維筋痛症というネーミングでも構わないでしょう。1回の治療で1~2週間、苦痛が解除されるので1~2週毎にブロックし、そして日常生活を送れるようにして差し上げています。一人の女性は1週間に2~3回のブロック治療を行い、それで仕事を行い給料をもらい社会生活を営めています。私が治療しなければ彼女はとっくに退職していたでしょう。それほど生活に支障の出る重症度です。


私のブロックがペイン科のブロックよりも効果がある理由は、脊髄・脊椎不適合症候群と診断をつけ、中枢感作が起こっているであろう場所を必ず推定・同定してから的確に何か所かにブロックするからです。無闇にじゅうたん爆撃のようにブロックをしても効果は低いのです。 さらにペイン科でさえ通常は行っていない上頚神経節ブロックを行いますので、まさに中枢(延髄・脳幹)が感作していてもそこに治療が届きます。


さて、このような治療=戦い、である理由は、症状が治ることなく延々と続くからです。正確には治らないのではなく、日常生活で常に脊髄系を損傷させてしまうので繰り返し治療しても、繰り返し悪化させるのです。まさにそれが「脊髄・脊椎不適合」の本態です。脊髄と脊椎が不適合なのでちょっとした姿勢(前傾を長時間)や運動で脊髄系、脳神経系を損傷さてしまうと推測しています。


3人の患者は「なんとかして治療間隔を開けていこう」と努力しながら治療を行っていますが、治療間隔が3週間もあいてしまうと、症状が悪化してふりだしに戻ります。よって私も仕方なく、ブロックを続けています。上記のような症状を持っているので普通のペイン科の医師には手が負えません。よって私が見放せば治療できる医師がいないのです。


線維筋痛症にこもらないでください

線維筋痛症はその病名に実体がありません。実体がないにもかかわらず、診断基準を設けて実体を持たせようとしている米国線維筋痛症学会の姿勢に私は同意しません。

「私の病気は線維筋痛症というものだ」と自分の苦痛に診断名をつけたくなる気持ちは十分に理解できますが、それは一般的な臨床医に認識されている病態ではないということを知っておいた方がよいでしょう。よって、線維筋痛症という名で社会保障制度を受けようとしても認めてもらうことが難しい現状があります。

それを認めてもらうために線維筋痛症学会の医師に診察を依頼することは構わないと思います。友の会に入会するのもよいでしょう。しかし、現時点で線維筋痛症はどこまで行っても実体のない症候群です。実体が判明すればその病名ではいられないのですから。

 

高コレステロールが認知症を進行させる

高コレステロールの話をする前にまずコルチゾールが脳のシナプス形成にどのような役割を担っているかについて述べる。


2012年岩手医大の祖父江らはストレス条件下で増加するコルチゾールがシナプス形成障害を引き起こすメカニズムを分子レベルで解明。その一方でラニッシュラオらは動物実験では重大なストレスを受けている間に、多量のコルチゾルは動物の不安行動を緩和させたことを示す。また、コルチゾールが減ってしまうと海馬の神経細胞は樹状突起をのばすことができずとあり、コルチゾールが枯渇しても記憶障害が起こると言われる(2010年別冊ニュートン「脳と心」)。


結局、コルチゾールは分泌量・分泌期間などによりその役割は変化し一様ではない。コルチゾールは間違いなく脳の機能を保つ役割をしていて、多すぎず、少なすぎず、バランスを保つことが脳機能の正常化に必要であることがわかる。コルチゾールのバランスが崩れることが脳に様々な悪影響を及ぼすと言える。わかりやすく言うと、

  1. 脳が強いストレスを受けた時は瞬間的に多量のコルチゾルが分泌されなければ脳細胞の損傷は免れない。
  2. コルチゾルが長期に渡って分泌されるとシナプス形成が阻害される
  3. コルチゾルが枯渇してしまってもシナプス形成に障害が出る

脳にとってコルチゾルはバランスよく有事に適宜分泌されることが大変重要であるといえる。適宜分泌されなければ、その度に脳細胞が障害を受けることになるだろう。


人はストレスを受けると不安や焦り、イライラなどによりコルチゾールが多量に分泌され、脳の過剰な反応を抑えようとするが、その反面、ストレスが長期化し、コルチゾールが分泌され続けると、脳のシナプス形成まで停滞しうつになる。


それを過ぎると、ストレス後症候群(PTSD)ではコルチゾールの慢性的な減少が起こり、これが正常な脳の機能を阻害し、記憶障害などを引き起こすと推測されている。慢性的な、コルチゾールの減少は認知症を進行させるようである。


さて、問題となるのは慢性的なコルチゾール減少は誰もがなるというわけではなく、ある条件下で起こるところにある。その条件が高コレステロールである。


ここでは敢えて高コレステロール血症という言葉を用いなかった。なぜならば、最近では薬の発達で、コレステロールを必要以上に摂取しても、そのコレステロールを血液内に移動させないことができる。よっていくらコレステロールを過剰に摂取しても血中コレステロール値は正常であるというのが通常になりつつあるからだ。私の言う「高コレステロール」とは血中コレステロールが高いことを指すのではなく、過剰に摂取し、過剰に蓄積されている人のことを示す(血中コレステロールが高いとは限らない)。


コルチゾールの枯渇は、そうした「高コレステロール状態」の人に起こりやすいということを私は2013年に偶然発見した。発見のきっかけはコルチゾールを体内に投与したときの副作用を調査だった。


通常では副作用がでないはずのごく少量のコルチゾールを投与し、その1~2週以降の血中のコルチゾールとACTH(副腎皮質刺激ホルモン)を測定したのだが…。こく少量のコルチゾールしか投与していないのにコルチゾールが激減する症例が少なからず存在し、その90%が「高コレステロール状態」だったのだ。


つまり、必要以上にコレステロールを摂取している人は、外部からコルチゾールを投与するとコルチゾールが急激に低下しやすい(副腎皮質や下垂体の機能が低下する)ことが判明したのである(「高コレステロール血症と下垂体機能低下症の関連調査」を参)。


ではコルチゾールを投与しなければいいではないかという話になりそうだがそうではない。私が投与しているコルチゾールはごく低用量であり、普通に体内で生成される分泌量よりも少ない。つまり、私の投与したコルチゾールよりも大量のコルチゾールが緊急時(ストレスを受けた時)には体内から分泌される。だから普通の人でも「高コレステロール状態」にある人はストレスを長期間受けているとコルチゾールが正しく分泌されない体になってしまうというところに重大な問題点がある。


私の研究からわかったことは、どうやら、高コレステロール状態にある人の場合、わずかなコルチゾールが分泌されただけであっても視床下部や下垂体に強烈なネガティブフィードバックがかかってしまう。これが慢性化すると下垂体や副腎皮質が委縮してしまいコルチゾールの枯渇が起こる。


話を最初に戻すが、コルチゾールはそもそも脳のシナプス形成に必需品である。バランスよく分泌されることが脳のシナプス形成に重要である。高コレステロール状態ではそのバランスが崩れ脳のシナプス形成障害が起こり、認知症を進行させることが考えられる。


コルチゾールの増加が引き金となって認知症が進行する危険性があるわけだが、問題はどういう時にコルチゾールが増加するかである。もっとも暴露機会が多いのは感染症、特にインフルエンザである。


感染症を患った際には炎症を抑えるために副腎皮質からコルチゾールが多量に分泌される。しかし、その際に高コレステロール状態であると、視床下部や下垂体にネガティブフィードバックが強烈にかかり、下垂体機能低下・副腎皮質機能低下が続発する可能性が極めて高い。感染が長期化すると下垂体-副腎機能低下は3カ月近く長引く。その間、認知症や記憶障害が進行する可能性が高い。


こうした自己コルチゾールに対する過剰なネガティブフィードバックを起こさせないためには高コレステロール状態を改善する以外にない。つまり、高コレステロール治療薬を服薬しても無駄で、コレステロールの摂食制限をする以外に方法はない。


高コレステロール血症の人口は2200万人とも言われ、摂食制限をしなければならない人口割合は莫大である。これらの人口に対する高コレステロール治療薬の売り上げは莫大であり、私がこうした内容を公表することは世界を揺るがす社会問題にも発展しかねない。よって学会発表ではなく、ブログでのつぶやきとして公表する。ことが重大なだけに事実確認はもう少し慎重であるべきだからである。

 

コレステロール値が高いと不明熱が続く

日本医事新報No.4692「臨床検査値の落とし穴」に「高コルチゾール値を示した副腎機能低下症の1例」があった。主訴は浮遊感、食欲不振、発熱が2週間以上続く。低Na血症を示し、副腎皮質機能低下症を疑われたのだが、コルチゾール値が高くて不思議だなあという話が掲載されていた。


この謎解きは、副腎皮質の機能が低下していてもストレス下には高値になることもあるという「落とし穴に注意」という話であった。しかし、「なぜ、副腎皮質機能低下が起こるのか?」について論ずることができる医師は多分いない。


私は高コレステロール血症があると、たとえ経口薬でコレステロール値を正常化させたとしても、ステロイドの少量負荷で副腎機能、及び下垂体機能低下を招きやすいことを2年前に発見し、そのデータを論文化しているが学会には発表していない。唯一このサイトに掲載してはいるが、世間に広めようとは思っていない。混乱を招くからだ。知らぬが仏という言葉通りである。


コレステロールが高ければ、ストレスを感じた時に自分の副腎皮質からステロイドが分泌され、そのステロイドが強烈に下垂体にネガティブフィードバックをかける。よって下垂体機能が低下し、さらに副腎機能低下が続発する仕組みがある。今のところこの仕組みを知っているのは私だけである。


下垂体機能―副腎機能低下が起こると、体内で起こっている炎症現症の熱処理ができなくなるので、微熱が続くようになる。微熱の根本原因が高コレステロールにあるかもしれないなどというおとぎ話を、今のところ信じる医者は皆無である。


別に、それはそれで構わないが、このサイトを偶然発見し、偶然、この文章を読んだ方には真実を述べておこう。高コレステロールは動脈硬化が怖いだけではないということ。ストレスに耐えられない人体を作ってしまうということを頭の端に入れておいていただければよい。

血圧不安定による失神発作予防に上頚神経節ブロック

2017年治療成績

高血圧では失神しやすい

高血圧を放置していると失神しやすいことを知っている一般人は少ない。血圧が高い人は、血圧が下がった際に脳の血流量が激減しやすいというのが理由である。普段の血圧が130(上)の人が90(上)になっても失神しないが、普段の血圧が180の人が90になれば失神する。


私のかかりつけの患者の中に月に2~3回、血圧の不調で失神してしまうという患者がいる。79歳の女性であるが、彼女は内科医から降圧剤をもらっているが、血圧が低めの時はそれを飲まないように自分勝手に決めている。その理由は、血圧が低い時に降圧剤を飲むと失神してしまうからだそうだ。つい先日も30分間意識消失となり、大学病院に搬送されている。


私は彼女に「血圧を低めに安定させないと、余計に失神するから薬を正しく飲むこと」を勧めているのだが、彼女は失神することを恐れて降圧剤を不定期にしか服用しない。だが、彼女の意見にも一理ある。現在、本態性高血圧の原因は不明であり、原因不明な病態を治療している時点で、降圧剤を体調とは無関係に定期的に飲み続けるのが本当によいのかどうか、実際は内科医にわかるはずがない。医者は神ではないのだから。


彼女は血圧が低い時に降圧剤を飲むと失神するというのだから、その意見は半分は間違っていないだろう。結局彼女のような症例は、「こうすればよい」という王道がない。なぜならば、こうした不安定な血圧の原因は自律神経が関与していることが多いからである。自律神経の不調を治せる医師はおそらくいない(私を除いて)。後に私は彼女の自律神経失調を治療する。これは後述する。


自律神経失調による失神の原理

自律神経失調による失神・意識低下は、高齢者に限ったことではない。小学校の朝礼ではほぼ毎回倒れてしまう児童がいるが、これがまさに自律神経失調症である。血圧がなんらかの理由で低下した場合、本来なら自律神経の作用で血圧を保つようにする。その機能がすみやかに働かないから血圧が低下して脳の血流量が低下して失神する。よって広義の自律神経失調である。血を見て倒れたり、注射されると倒れるのも過敏な血管反射が原因であり、これらも自律神経による防御システムが脆弱であるといえる。失調とまでは言わないが不調である。上頚神経節ブロックはこれらの失調症状にどうやら有効なようである。


二・三人目の失神前駆患者来院

本日、上記の彼女と同様の症状を訴える患者が来院した。私は整形外科医だが、血圧の不調も治療できるので彼女の話をまともに聞く。76歳女性、高血圧の治療のために降圧剤を定期的に服薬しているが、1日に数回、ふわっとして意識が落ちそうになるという。内科医に相談したところ、血圧は安定しているのだから血圧のせいじゃない。そんな病気はないと断言されたそうだ。三人目は82歳女性、ここ数カ月、布団をまたごうとした際や急ぎ足をしようとした際にふらっとして意識を失いそうになると私に訴えた患者がいた。血圧は上が180から120まで最近変動が多いという。降圧剤はのんでいる。それと同時に項から頭にかけて電撃痛が走って眠れないという。


私は、自律神経が不調であると血圧が変動しやすく、急な動きに血圧が耐えきれず、急に下がることがよくあることを説明した。治療の為に派降圧剤は無効で、自律神経の不調を治さなければならないと告げた。しかしながら自律神経はブロックボックスであり、これを治療できる医師はいないことも告げた。そして最後に


「私はブロックの専門家なのですが、自律神経を治療するブロックをすることができる珍しい医者ですが、受けて見ますか?」と話を持ちかけた。彼女は二つ返事でokしてくれた


自律神経による血圧不安定の治療法

私はすでに自律神経失調症を上頚神経節ブロックで治療する方法をほぼ確立している。上記の79歳の女性には毎週1回、上頚神経節ブロックを行い、それ以降失神発作は起こらなくなった。さらに彼女は「頭がすっきりするからブロックしてほしい」と懇願するようになった。頭がすっきりするのは2~3日と短いが、それでもふらっとすることはなくなったというので1週間を通して自律神経は安定していると思われる。


76歳の彼女にも同様に上頚神経節ブロックをしてさしあげた。結果は随時報告する。82歳の女性にも上頚神経節ブロックを行った。その1週後の診察でふらつきが全く起こらなくなったこと、頭痛がなくなったこと、熟睡できるようになったこと、血圧が上が140で安定したことを私に教えてくれた。「今後どうすればよいでしょうか?」と言われたので、「1回のブロックで治ったと思いますから、これ以上は治療しません。もし、再発するようならすぐに言ってください。その時はすぐにブロック注射します」と告げた。


1年に1回、自律神経の不調で激やせする62歳女性

この他にも自律神経失調症の治療を何例かに行っている。1年に1回程度誘因なくめまい、耳鳴り、吐き気、全身倦怠、抑うつ、神経過敏、発汗異常、血圧不安定、が起こり、吐き気のために数カ月食事がまともにできず、10kgやせたと訴える62歳の患者。上頚神経節ブロックを2度行ってすっかり完治した。その翌年、やはり同じような症状が現れたので、今度は早いうちに上頚神経節ブロックを行って、予防した。


最後に 上頚神経節ブロックで血圧不安定を治療でき、自律神経失調症を改善できるということを、信じない者は多いだろう。信じない者は信じる必要はない。信じたい者は治療を受けに来ればよいだけのことである。別にブロックに大きなリスクがあるわけではないのだから、治療を受けてみて判断すればよいだけのことである。私は自分の奇蹟のような治療を皆に知らせたいからこのブログに記載しているわけではない。自律神経失調という難治性の病気に悩んでいる人に、治る可能性という門戸を開いて差し上げているだけのことである。興味ないもの、信じない者に理解してもらう必要はない。

脳梗塞後遺症や認知症治療に上頚神経節ブロックが効果あり

2017年治療成績

<記憶力の向上>

  • 症例:68歳 女性
  • 主訴:耳鳴り、肩こり、腰痛、左坐骨神経痛、意欲減退、記憶障害
  • 現症1:耳鳴り:何匹ものせみがミーンと鳴いていて非常にうるさいというような耳鳴り(8年前から1日中鳴っていて鳴りやむことはない)
  • 現症2:家事がやりたくない、遊びも趣味もしたくない、買い物にもいけない
  • 現症3:記憶障害:買い物に行くと何を買おうとしていたか思い出せない、朝起きるとやるべきことが思い出せない。
  • 治療:上頚神経節ブロックを2013.11.05から週1回の頻度でおよそ8か月、計33回行った
  • 経過:耳鳴りは早朝はゼロになった。昼間は低い雑音がするが集中しないと聞こえない程度まで改善
  • 記憶障害:メモなしでも買い物リストを暗記できる、メモなしで次の日にやることがわかる、スケジュール管理にメモ帳が不要になる、ナンプレ(パズル)が最初は10分かかっていたが現在は4分台となる。
  • 意欲減退:上記のように趣味(パズル・ゲーム・パソコンでの映像編集)ができるようになり、面倒くさくてできなかった家事が楽々できるようになる。
  • 考察:難聴治療を目的に始めたが、明らかに(本人が自覚できる)記憶力が飛躍的に向上したことを考えると、上頚神経節ブロックが記憶障害や認知症に効果があることがわかる。また、意欲を向上させる効果もあることがはっきりした。

さらなる治療例はこちら


<新たな成果、もう一つの症例>

前回ブログの脳梗塞+難聴の症例を思い出してほしい。難聴治療の目的で上頚神経節ブロックを4回行い、それなりに音が大きく聞こえるようになったという快挙に遭遇したが、その彼女の続編である。詳細はトップページ>最新医学トピックス>脳梗塞後遺症に革命的な新治療、を参考にしてください。


「このブロックは現在難聴治療としてやってますけど、実は脳の血流量を増加させる効果があるんで、脳梗塞にも効果があるかもしれないんですよ。それに認知症や記憶力低下にも効果があると私は思ってるんで、将来はそちらの方でも治療に応用していこうと考えてるんですよ。」

と彼女に話ししながら今回5回目のブロックを行った。すると彼女は私にこう話した。


  • 「先生、実をいうとピーラーが右手で使えるようになったんです。」私は彼女が何を言いたいのかわからなかった。
  • 「皮むきをこう引くことができなかったんですよ」と、ピーラーを使うしぐさをする。
  • 「それができるんです」まだ、彼女が何を言いたいのかわからない。しかし、私はピンときた。
  • 「もしかして、この注射をするようになってから、できるようになったということですか?」
  • 「そうなんですよ、できるようになったんです」
  • 「ええ~~っ」と驚かずにはいられなかった。
  • 「それはすごい」彼女はまさにこの上頚神経節ブロックを行うようになってから、あきらかに右手の巧緻性が上がったと言う。
  • 「でも、先生、字を書こうとすると手が横に滑るんです。これも治ります?」
  • 「治るかどうかは分かりませんが、続ける価値はありそうですね。」

もちろん、私は彼女の話を全て信用しているわけではない。しかし、脳梗塞や認知症にも効果がある可能性が高いとは思っていた。彼女が言うように字を書くときに横滑りしてしまう症状が年内に改善されれば、脳梗塞後遺症の治療として成立する可能性が十分ある。よって今後の報告を待ってもらいたい。


その後さらに2度の上頚神経節ブロックを経て

  • 「字が書けるようになりましたか?」
  • 「いや、まだうまく書けませんが、手はふるえにくくなりました」
  • 「それだけじゃないんです。足が内側に向いていてリハビリの先生には「それは脳から来ているから治らない」って言われてたんですけど、少しずつ足がのびるようになってきたんです」
  • 「それはすごい」

治療5か月目

  • 右手で髪の毛をとかせる(てぐし)ができるようになる。
  • 座位でいると右足が外に開いてしまっていたが、開かなくなった
  • 表情の変化が豊富になった

今後も追加報告していきます

感音性難聴の根本治療に成功

2017年治療成績

感音性難聴の根本治療に成功

<はじめに>

難聴には治る難聴と治せない難聴があり、伝音性難聴は治すことができますが、感音性難聴は現医学ではほとんど治せないとされています。感音性難聴は内耳神経の不具合による難聴ですから、治療には脳幹へのアプローチが必要であり、現医学では治療法なしとされてきました。しかしながら、私が独自に開発した上頚神経節ブロックで脳幹への血流改善療法を行い、難聴が見事に回復した症例を経験したので報告します。 今後高齢化に伴い難聴人口が増加し、要治療人口も激増すると思われますので本治療法を耳鼻咽喉科の先生方にマスターしていっていただきたいと心からそう思っています。


上頚神経節ブロックの治療実績はこちらをクリック


  • <症例:75歳女性>
  • 現病歴:3年2か月前に脳梗塞で入院。右片麻痺となり言語障害、歩行障害などがありましたが、その時は難聴はありませんでした。1年前から左耳の聞こえが悪いことに気づきましたが脳梗塞のせいだろうとあきらめ、耳鼻科に行くこともしませんでした。10か月前に転倒して右足関節痛で私の外来を初診。右足をひきずっていたが患者は「これも脳梗塞のせい」だと思っていたので治療をしてほしいと私に訴えませんでした。  私は右足のひきずりは腰椎由来である可能性があるのでブロック治療を勧めました。そして腰にブロック治療をすると足の引きずりは80%程度改善されました。患者はこの治療結果に大変驚き、それ以来私を信用するようになりました。2か月前、患者は私に「先生に相談すれば何でも治してくれると思ったのでお話しします」と最近左耳の難聴がひどくなってきたことを初めて私に訴えました。イヤホーンをつけても左耳では音が全く聞こえないという主訴でした。私は、耳鳴りやめまいを上頚神経節ブロックで治した実績を多数重ねていますので「難聴は治る保証はありませんがブロックを受けますか?」と訊ね、「ぜひお願いします」という運びになり、難聴治療を目的として上神経節ブロックを開始しました。

  • <治療>
  • 1回目:上神経節ブロック 1%キシロカイン1cc 左頸部に行う   →イヤホーンから音が聞こえるようになってきたが、音を区別できないという
  • 2回目:同ブロック 1%キシロカイン1cc×2 両頸部に行う  →イヤホーンの音がかなり聞こえるが、音がまだ割れている
  • 3回目:=2回目  →左耳でも音がはっきり聞こえるが右耳と比べると聞き取りにくい
  • 4回目:左耳では音が少々割れて聞こえる
  • 5回目:左耳で音が割れにくくなった
  • 6回目:左耳で少しずつ聞き取れるようになってきた
  • 9回目:左耳の聞こえ具合は右耳の半分にまで回復(治療前はイヤホーンの音がほとんど聞こえなかった)
  • 18回目:左耳の聞こえ具合は右耳の6~7割にまで回復 それ以外に、右足の尖足が改善傾向(短下肢装具なしで家では歩行可となる)、右手で野菜の皮むきと大根の千切りができるようになる。というような脳梗塞後遺症による巧緻性低下が改善した。
  • 20回目:左耳の聞こえ具合は変化なし。しかし、自分の声が強く響くようになる。ただし、自分の声が割れて聞こえる。
  • 22回目:割れて聞こえていた自分の声が、少し割れなくなってきたと感じる。
  • 24回目:音の聞こえに変化なし 改善傾向は感じられないが治療を継続する
  • 28回目:左耳の聞こえが右耳とほぼ同様のボリューム10割にまで改善。しかし、音が割れて聞こえるためかえって不快であると訴える。

  • <結果と今後>  上頚神経節ブロックで脳幹の血流量を上昇させることにより、血行不良に陥り神経壊死に陥った内耳神経を再生させることができることを世界で始めて証明した症例。左耳はイヤホーンの音が全く聞こえない状態であったものが、ボリュームに関しては右と同等になるまで回復させることができました。治療回数は28回。しかしながら、音が割れることにより「会話の内容が聞き取りにくい」状態です。オーディオグラムを行っていないので詳細はわかりませんが、音の識別能を向上させるにはさらに治療を追加していかなければならないでしょう。しかしながら、患者は「音が割れて聞こえることが、聞こえないよりも不快である」と私に訴えました。そして、これ以上治療を続ける根気がないといい始めました。よって、私はこれ以上の治療をしないことにしました。音が聞こえるようになっても、その音が不快であれば聞こえないほうがいいという患者の訴えを尊重することにしました。クリアな音になるまでにあとどの程度治療を続けなければならないかを示すことができない歯がゆさがありました。

  • <難聴と脊髄・脊椎不適合症候群の関係>  私は既に上頚神経節ブロックを用いて嗅覚障害、眼精疲労、眼瞼下垂、三叉神経痛、耳鳴り、めまいなどを根本的に治療した実績を重ねています。そして今回、難聴治療に成功したわけです。  これまでの治療経験から、これらの不定愁訴の根本原因は脳幹の血行不良にあると思われ、多くの血行不良の根本原因は脊髄・脊椎不適合症候群にあると確信するに至っています。  すなわち脊椎の遺伝的な形態異常のため、脊髄が尾側に引っ張られ、脳幹にその牽引力が伝わって血行不良や神経細胞の損傷を起こすという病態です。  難聴には遺伝的要素があると言われていますが、今後は耳鼻科医と提携し、難聴・耳鳴り・めまいと脊椎の形態についての関連性を研究していく予定です。

  • <感音性難聴治療に上頚神経節ブロック>  小児の難聴、高齢者の難聴にかかわらず、今後は感音性難聴の治療に貢献していく予定

症例症例2:67歳女性 奇蹟が起こる!

27歳時に妊娠中に強い耳鳴りと難聴出現。出産を機に増悪。難聴を治療してもらおうと、40年前の当時、鼓膜内ステロイド注射を毎週×2年間続けるが、全く改善せず。以降40歳まで徐々に症状が進行。40歳時にC型肝炎治療のためにインターフェロンで加療するが、その際に両耳の耳鳴りと難聴がさらに悪化したためインターフェロンを中止。しかしこのため補聴器なしでは聞こえないようになる。耳鼻科医に相談するも打つ手なしとのことで治療をあきらめる。

<経過>

  • H26.05.07、初回のブロック後1週間後の診察で「両耳共に音が大きく聞こえるようになった」と彼女は私に告げた。「でも音が割れるんです」とクリアに聞こえないことを訴えた。数回ブロックを行うが、そこから著変なし。
  • このためH26.05.28よりブロックを週に2回行うことにする。H26.06.28現在 少しずつ音量が増加するが音がクリアには聞こえない。
  • ブロック後もあまり変化がないということなので治療5カ月目より上頚神経節ブロックのキシロカインの注射量を1.5~2倍量にする。
  • 治療5カ月と2週目 ブロックの翌日から右顔面が割れるように痛くなる。本人は持病の副鼻腔炎が悪化したと思っていたが、脳外科医にMRIでは異常なし、三叉神経痛であると診断を受けテグレトールを処方される。しかし、これを服薬後めまいと嘔気で3日間寝たきりになる。
  • 私の外来にかかり三叉神経痛を除去目的に上頚神経節ブロックを行う。すると右耳にトラックのエンジン音のような大きな耳鳴りが発現よからぬことが起こったのかと不安になるが、おとなしく寝ていた。
  • 耳鳴りは徐々に消失し、3日目に消えた。すると同時に、三叉神経痛も、数十年来の頭重感も、すっきり治ってしまった。それと同時に両耳の聞こえが急激に上昇。今までテレビのボリュームを30で聞いていたが、それではうるさく聞こえるようになり、今は25で聞いている。
  • 治療6カ月目ではっきりと耳の聞こえがアップしたことを実感、そして頭重感も消え去ったという大きな治療成果が得られた。今後も治療を続けるが、完成された感音性難聴をブロックでここまでしっかりと治療できた例は、おそらく世界初と思われる。
  • 治療7か月目 難聴治療の停滞感が否めない。そして定期通院をさぼる週が出始める。私は週に2回の通院を指示したが来院しない。耳の聞こえは全体的にはよくなったが、補聴器を外せるまでに至っていない。この頃、頭重感が強くなったり弱くなったりを繰り返し、本人は副鼻腔炎が原因であると思い込んでいた。私はこれを三叉神経痛由来と診断したが、本人はそれを信じず、耳鼻科通院を頻回に行った。ある日私が「私がブロックを行った日と頭重感が起こる日の関連を日記につけなさい」と指示。すると本人はようやく、ブロックを行った時に頭重感が消えてなくなり、そこから4~5日経過すると頭重感が起こることに気が付いた。よって私のブロックが頭重感にも効果があることをやっと認識するようになる。そこからは「きちんと週に2回ずつ通います」と誓った(2014.11.21)。
  • 再び難聴が悪化 テレビのボリュームを30から25にしぼっても聞こえるようになっていたが、再び30に戻る(2014.11.末)。自分の声が割れるように聞こえてしまうために聞き取りにくくなったとのこと。こうした変化は治療上の一過性の症状であると考え、治療を続ける。
  • 治療7か月と2週 最近は三叉神経痛の治療を徹底したいという目的で、この2週間は週に2回通院を徹底する。おかげで三叉神経痛の痛みが消え、大変喜んでいる。しかしながら難聴は改善しない。テレビのボリュームは30のままである。しかしながら、三叉神経痛にこれだけ効果があったわけだから、治療は続けたい!という意志は継続する。
  • 治療8ヶ月と2週 改善傾向が全くないので、治療増強。上頚神経節だけでなく中頚神経節にも同時にブロックを行う。その4日後の外来で「テレビのボリュームを22まで下げても聞こえるようになりました」と明らかな改善をみる。しかも、音がクリアに聞こえ、割れないという。ただし自分の声は割れて聞こえる。音がクリアに聞こえるようになったのは大進歩である。

結果と今後

週に1度の上頚神経節ブロックを行うこと7ヶ月。ある程度聞こえがよくなりましたが、補聴器をはずすところまでは来ていません。この頃から治療に進歩がなく停滞感が漂うようになります。そこで8ヶ月目から週に2回のブロックを行います。しかしそれでも変化がありませんでした。そこで8ヶ月と2週目に上頚神経節+中頚神経節の2箇所×左右=4箇所 のブロックを行います。するとこれまでになかったほどの改善を経験します。今後も結果を報告します(2015.01.20現在)。


その後の経過2

さらに4か月後、停滞期が訪れます。週に2回の上頚神経節ブロックを行っても改善が全く認められなくなりました。相変わらず、音は聞こえるが割れて聞こえにくいと訴えます。音が割れると結局聞き取りにくいため、聞こえない状態で補聴器を強化した方が聞き取りやすいといいます。さらに上頚神経節ブロックの副反応としてたまに不整脈が出るようになり、一旦中止することになりました。中止後は徐々に難聴が進行し、今では補聴器をつけていても大声をださなければ聞き取れない状態になりました。おそらく、ブロックで難聴の進行を止めていたのだと思われ、中止後は自然に難聴が徐々に悪化の経緯をたどっています。

H27.10.現在、難聴治療の患者は6~7名通院されています。ほとんど患者に改善傾向がありますが、テレビのボリュームで例えると、30→22で聞こえる程度の改善です。20以下でクリアに聞こえるようにはなりません。治療には収穫逓減があると思われ、ある一定の改善レベルまで達すると、それ以上はなかなか改善しないようです。

よって、今後は治療は10回から20回とし、ある程度の効果が出ればそこで打ち切るというスタイルにしたほうがよいと思われました。ただし、効果としては間違いなくありますので、難聴の進行防止やある程度の改善のためにこの治療法は優秀であるという結論を導き出しました。


難聴治療に挑戦中

現在、右耳がほぼ全く聞こえないという患者に、患者の協力により毎週ブロックを行い、それを1年以上続けるという治療実験を行っています。この患者は「難聴治療実績で有名な某鍼灸院」に通院し、それで無効だった患者です。ほぼ1年後に成果を報告します。

 

 

人間ドック学会のコレステロール基準がやばい

高コレステロール血症と下垂体・副腎機能低下

2013年現在、おそらく私が世界ではじめて高コレステロール血症と下垂体機能低下症の関連を発見しました。発見は偶然です。ケナコルトというステロイド剤を使用するとどの程度副腎機能が低下してしまうのかを調査中に、偶然にも、「高コレステロール血症の患者ではたとえ治療薬を飲んでいたとしても、普通では副作用が出るはずもないような少量のステロイド使用でも、下垂体・副腎機能低下が起こり、ACTHやコルチゾールが異常低値を示し、長期投与で下垂体・副腎機能低下症が慢性化する可能性がある」ということを発見してしまいました。詳細は「高コレステロール血症と下垂体機能低下症の関連」をご覧ください。


 

人間ドック学会の新基準がやばい

私はとりあえず、2013年現在の基準である総コレステロール220以上と未満のグループ分けで、220以上、または219以下でも高コレステロール血症治療薬服薬中の症例で、ACTHやコルチゾールが低下しやすいことの関連を証明しました。ところが2014年人間ドック学会が発表した新基準では66歳以上の高齢者では280でも正常とします。こうなると総コレステロール値が280あっても正常だから大丈夫という考え方となり、誰もコレステロール摂取量を食事療法で下げようとする人がいなくなります。すると、潜在的な下垂体・副腎機能低下症予備軍が、何千万人と作られてしまうことになります。


 

副腎機能低下症ではストレスに耐えられない

副腎機能が低下しても肉体的には健康に見え症状は出ません。しかし、免疫を調整する副腎皮質ホルモン(体内のステロイドホルモン)が分泌されにくくなるため、小さなストレスでも大きな症状が現れやすくなり、かぜを引いただけでも40度代の熱が出て死に至らしめる可能性が高まるなど、ストレスに対する耐性が激減します。


 

人間ドック学会にけちをつけるつもりではない

私は人間ドック学会の名誉を傷つけるつもりはありません。高コレステロール血症と下垂体・副腎機能低下の関連を発見したのもおそらく私が世界で初めてだと思われますので新基準の発表はやむを得ないことと理解しています。私の発見した新事実は世界に波紋を与えると思いましたので、学会発表をするつもりはありません。いずれ誰かが発見し発表するでしょう。世間を騒がすつもりはありませんので、とりあえず、目立ちにくいように個人的なブログでの発言にとどめておきます。


 

賢明な方は低コレステロール食を!

コレステロールは高齢者には血液のゴミ、人体内のゴミとなり、摂取すること自体が健康を害します。コレステロールは体内に蓄積される一方で出ていかないからです。しかも多くのホルモンはコレステロールから作られるので、もととなるコレステロールが多すぎると、ホルモンの生産に抑制がかかると思われます。ただし、症状にはあらわれず、免疫力の低下やストレスに対して死亡しやすくなるという目に見えない害を与えるのみと思われますので、本人も周囲も医師も健康の害は気づかれません。賢明な方はコレステロール新基準を信用せず、食事療法でコレステロール値を200未満に保つことを強くおすすめします。詳細をお知りになりたい方は上記の論文を参考ください。

腰痛は医者には治せない

2017年治療成績


最先端の科学では「肩こりは中枢感作で生じる」ということが当たり前の知識となりつつあります。なりつつあるというのは、まだ医師の間ではほとんど知られていないということを意味しています。


肩の凝りは神経が炎症を起こしているサインとして筋肉を凝った状態にさせているということです。その根本原因は神経にあります。神経が原因なら、完治させるためには神経ブロックをすることが最良であることがわかります。


私は神経根ブロックをブラインドで数十秒で行えるという特殊な技術を習得していますので、実際に肩こりの患者様に即座にブロックをして差し上げ、何十年と治らなかった肩こりをいとも簡単に根本治療するということを朝めし前に行っています。


さて、腰のこりもまた同様に神経の炎症(中枢感作)が原因であることが非常に多いと思われますが、そうであるなら腰の凝りを治すためには筋肉をマッサージしてもトリガーポイント注射をしても無駄で、神経ブロックが著効するということになります。


この考え方の正当性は、すでに私は腰の凝りを硬膜外ブロックで完治させることで証明しています。トリガーポイント注射や物療では治らない腰痛の患者様を硬膜外ブロックをたった1回行うだけで本当に完治させてしまえるからです。ちなみに私の中で「完治とは症状が3割未満になった状態が4週間以上続く」と定義しています。腰のこりが中枢感作が原因であるのなら、それを根本的に治療するには神経ブロックが最善です。


しかしながら硬膜外ブロックなどの神経ブロックはその手技自体が「痛い・危険」であると本末転倒となります。痛みを治すのに、さらに痛くて危険なブロックをするというのでは誰もそんな治療を受けないでしょう。ですから、もしも腰の凝りに硬膜外ブロックをするとすれば、「痛くなく、安全にできる高等なブロック技術」を習得していないと患者様にしてさしいあげることが不可能だということがわかります。


例えば私は硬膜外ブロックを行う際に25G針という世界でもっとも細いカテラン針を用いますが、この針を使用できるほどの技術のある医師は国内を探してもほとんどいません。よって結局、他の医師たちにとって「腰の凝りに硬膜外ブロック」という治療は常識外れとなりますから、「腰痛は医者には治せない」という結論に達するわけです。


また、腰痛の多くが腰髄・神経根の中枢感作が原因で起こるという認識さえも、国内の医師たちにはない至高です。だから腰痛を硬膜外ブロックで治すという発想にはなりません。おそらく多くの医師たちは「たかが腰痛を硬膜外ブロックで治すのは常識外れ」と考えています。しかし事実は違います。「腰痛の多くは硬膜外ブロックでしか治せない」が真実なのです。なぜなら腰痛もまた中枢感作から起こるからです。


私の中枢感作の概念は疼痛学で使用している中枢感作の定義からかけ離れるというご指摘がありました。よって今後、私は中枢感作という言葉を用いず、刺激伝道系の感作という言い方をすることにします。

また、肩の凝りが神経の炎症から来るという考え方も正しくないというご指摘を受けました。ここでは正誤について論争はしません。何が正しいかの真実はどんな教授にもわからないことなのですから。ただし、実際に根治させる治療があるのだから、根治する理由を考える基礎医学をもっと発展させていっていただいたほうが、肩が凝る原理を研究していっこうに治せないでいる医学よりも建設的であると思います。